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酪農体験学習研究会の開催について

川崎 友子

 平成14年4月から、小・中学校ではゆとりのある教育の実施と生きる力を育むことなどを目的に、学校週5日制が導入されるとともに、総合学習の時間が設けられました。
 特に、総合学習の時間では、農業を通じて生命や食物の大切さを学ぶ「食農教育」の一環として、農業体験学習に強い関心が寄せられています。とりわけ畜産の分野では、酪農教育ファーム認証制度が平成13年1月に創設され、酪農家のありのままの姿や動物の生態等を学習する場の提供が積極的に推進されています。
 また、食の安全性が問われている今日、このような体験学習の受け入れは、酪農への理解促進や「食」について考える絶好の機会であると考えられます。
 このため、昨年度、県内の全酪農家を対象に、酪農体験の受け入れに関する初めてのアンケート調査を行い、農家の受け入れ実態や意向を取りまとめました。また、その調査結果に基づき、「酪農体験学習に対して興味・関心がある」と回答された酪農家の方を対象に、今年1月、第1回酪農体験学習研究会を開催しましたので、その概要を御紹介します。

1 酪農体験学習に関するアンケート調査結果

(1)アンケート調査の実施方法

対象者
県内酪農家145戸
調査期間 平成14年8〜9月
調査方法 アンケート用紙を全農家へ送付
回答農家 69戸(回答率:47.6%)
 

(2)調査結果の概要

  • 回答農家69戸のうち、「酪農体験学習に興味・関心がある」とした農家は45%(31戸)で、「これまでに受け入れ経験がある」とした農家も55%(38戸)と、意識の高さが伺われた。
  • 受け入れの対象者としては、「小学生」が33%(28戸)と最も高く、次いで「中学生」が16%(14戸)という結果であった。
  • 体験内容としては、「牧場散策・スケッチ等」の家畜に接することのないものが35%(39戸)であったが、「搾乳・給餌・掃除・その他の日常作業」という日常的な作業を体験させる農家が56%(63戸)と多かった。
  • 一方、これまで受け入れたことのない農家の理由としては、「余裕がない」が63%(24戸)と最も多かった。
  • 受け入れ農家間のネットワークづくりについて、「希望する」とした農家は16%(11戸)で、活動内容としては、「情報交換」を挙げている農家が最も多く、今後一層の酪農体験学習の推進を図っていくためには、お互いの情報交換ができる場づくりが必要と考えられた。

調査結果グラフ

2 酪農体験学習研究会の開催

酪農体験学習研究会の様子
目 的
小・中学生等を対象とした酪農体験学習の受け入れ経験や関心のある酪農家を参集し、情報提供や意見交換を行うことにより、今後の農林業体験学習の一層の推進に資する。
開催日時
平成15年1月29日(水)
11時〜15時まで
開催場所
山口県セミナーパーク
参加者
アンケート調査で、酪農体験学習に興味関心があるとした酪農家、生産組合、県関係等、約30名

○内 容
(1)話題提供
「小・中学校における体験学習活動、総合的な学習の取り組みについて」
総合的な学習の時間のねらいや特色、小・中学校で始まった新たな取り組みについて、県教育庁担当者から情報提供された。

●総合的な学習の時間とは・・・
 1.地域や学校、子どもたちの実態に応じ、学校が創意工夫して特色ある教育活動を行う。
 2.国際理解、情報、環境、福祉・健康など従来の教科をまたがるような課題に関する学習を行う。

「全国における酪農教育ファームの取り組みについて」
酪農教育ファーム認証制度の取り組みについて、制度の設立背景から、全国における認証牧場での活動状況及び今後の課題等について、(社)中央酪農会議内橋総合対策課長から情報提供された。

酪農教育ファーム認証制度
酪農教育ファーム活動を安定かつ継続的に発展させるためには、牧場の安全・衛生管理が充実していることや指導(教育)能力が適正なレベルに達していることが求められるため、一定の要件を満たし、教育活動を行うのに適正な牧場を教育ファームとして認証する。
全国に169戸の認証牧場(H14年度見込み) 
  ※県内:藤井牧場(新南陽市)、拒D方総合農場(阿東町)
認証牧場は一般の酪農家から会社組織の観光牧場まであり、牧場の形態や体験内容は様々である。

(2)意見交換(※参加者からの主な意見)

  • 酪農は地域に密着した産業であるため、日頃のお返しをするつもりで、受け入れている。
  • 体験学習を受け入れることにより、自分たちが得たものが多くあるように思う。
  • 受け入れる際には安全面・衛生面に対して非常に気を使う。
  • 効果的な学習を行うために、先生達も酪農のことを勉強して牧場に来て欲しい。
  • 小・中学生等が牧場を訪問する時、何を求めて来るのか(何を学習したいのか)をもっと知りたい。
  • 受け入れ前には先生と打ち合わせを行い、自分達の思いや要望等を伝えておくことが重要と思う。
  • 受け入れ時に酪農家をサポートするボランティア(大学生等)の人材バンクがあったら良い。

 今回、初めてこのような取り組みを行ったところですが、参加した酪農家の方からは、日頃の活動内容や受け入れに対する思いなど、活発に意見が出されました。
 今後も、酪農だけでなく他の畜種にも輪を広げ、このような研究会を定期的に開催しながら、牧場からの情報発信やネットワークづくりについて、農家の方と一緒に検討していきたいと考えています。

山口県農林部畜産課 畜産経営班


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