松崎伸生
は じ め に
阿武・萩地域の6市町村を北浦、長北の2地区として、平成10及び12年度から畜産基盤再編総合整備事業に取り組み、酪農及び肉用牛経営の規模拡大、効率化、及び所得向上等を目的として、飼料基盤、施設・機械の整備、土づくりのための堆肥センターの整備等を進めている。
このうち、阿武町福賀東台では、平成12年度に、経産牛100頭規模の酪農施設を山口県酪農農業協同組合のリース牧場として整備し、平成13年4月に、三芳健一さんが町外からの新規就農により、経営を開始したので概要を報告する。
1 地域の概要
阿武町は山口県の北部に位置し、海岸部の奈古、宇田郷地区と内陸部の福賀地区からなり、農業としては米を中心に、果樹、野菜、畜産等である。
東台は福賀地区のなだらかな高台(標高520m)で、冬にはかなりの積雪があるものの、夏は涼しく酪農には適地であり、平成8〜11年度国営農地再編整備事業により、普通畑21.2ha(うち13.4haを飼料畑として利用)が整備されている。
2 新規就農への経緯
三芳さん(33才)は山口県立農業大学校を卒業後、山口県酪で約7年間、酪農ヘルパーに従事し、また、妻の恵美さんも女性酪農ヘルパーの山口県第1号として活躍していた。
多くの酪農家、及び乳牛と接する中で、酪農への魅力を感じ培った酪農への夢を、リース牧場制度を活用して実現することとなった。
就農後約1年が経過したが、酪農ヘルパーでの経験を活かし、夫婦一体となった経営を行っている。
3 施設・機械の整備と飼養管理状況
牛の飼養形態は、近代的なフリーバーンによる群管理であり、日常の飼養管理についても、ミキサーフィーダーによる給餌、パーラーでの搾乳等、省力的に実施している。
粗飼料の生産については、国営農地再編整備事業等で整備されている飼料畑約14haを主体に、(社)無角和種振興公社、粗飼料生産組合等と連携し、ラップサイレージ体系により確保する計画である。
また、環境保全対策について、糞尿は総べてオガクズ等へ吸着、堆肥化して周辺の飼料畑等へ還元し、パーラーの洗浄水等については、浄化槽(活性汚泥法)で処理している。
施設配置図
施設・機械の整備状況
施 設・機 械 名
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規 模・規 格
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備 考
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乳牛舎 |
1,438m2
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1棟
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搾乳舎(パーラー) |
159m2
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1棟
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パラレル 8頭シングル |
農機具・飼料庫 |
294m2
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1棟
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管理舎 |
35m2
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1棟
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糞尿等処理施設 |
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堆肥舎 |
360m2
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1棟
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堆肥乾燥舎 |
720m2
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1棟
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排水浄化槽 |
5.4m3
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1式
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トラクター |
80PS
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1台
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ミキサーフィ−ダー |
10
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1台
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ホイールローダ |
0.9
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1台
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スキットステアローダ |
0.9
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1台
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フォークリフト |
1.5t
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1台
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堆肥運搬車 |
2tダンプ
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1台
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4 関係機関による就農支援
酪農経営の立ち上げには、多額の設備投資を必要とするが、施設・機械の整備については、山口県酪のリース牧場制度(畜産基盤再編総合整備事業;事業主体は(財)山口県農林開発公社)により対応している。
また、施設用地、飼料畑の低額利用等については阿武町、乳用牛導入及び運転資金の借入については山口阿武農業協同組合の全面的な支援を得ている。
なお、就農後の経営及び技術指導についても、上記団体に、山口県畜産会、北部地区家畜診療所、萩農林事務所農業普及部・畜産部を加えて指導班を編成し定期的に実施している。
5 今後の展開方向と波及効果
三芳さんにおいては、平成14年3月時点の経産牛45頭から、平成20年目標である100頭、生乳生産量840tへ向けて、着実に規模拡大を進め、経営の安定化を図っていくことが必要である。
また、平成14年4月には、同リース牧場制度により、萩市木間へ経産牛200頭規模を目指して、若い担い手が新規就農する計画であり準備を進めている。
現在、阿武・萩地域では、8戸で280頭の乳用牛が飼養されているものの、小規模で点在化し高齢化が進みつつある。若い担い手が新規参入することにより、地域の中核農家として酪農の振興、及び拠点化が図られるとともに、地域の活性化につながるものである。
萩農林事務所 畜産部
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