遠野 義信
牛群検定データーベースの牛群管理プログラムを活用させてもらって、かれこれ1年半になる。大変便利で役に立つ。牛群検定成績表1枚だけでは、個体の成績はある程度分かるが、管理プログラムを見れば牛群の泌乳ステージごとの推移、栄養、繁殖、乳成分等牛群全体の傾向が見えるし、またそれらの相互関係がよく見えてくるのだ。当然のことであるが、良い情報が得られる農家は、良い成績が生まれて来る。事実年間管理情報を見て常に目標に近い管理が行われている農家の牛は、健康的で目の輝きや、皮膚のつや、牛の落ち着きが違っている。こうした農家は、当然経営的にも堅実でうまくいっているようだ。
特に多頭数飼育農家にはパソコンを活用し、これを積極的に取り入れていただきたい。1ヶ月1回牛群全体の傾向を把握し、軌道修正等早めに対策を立てることが大事だ。その上で個体のチェックをして牛群の流れの中に引き入れていく。極端にはみ出た牛は思い切って淘汰をする。そのための検定である。ただなんとなくやっているでは、今日の厳しい経済情勢の中では、破綻の憂き目を見ることにもなりかねない。
今や資料もいっぱいある、情報もいっぱいある。それをどのように使っていくかは個人の自由であるが、一番問題なのは、使おうとしないこと、問題意識のないこと、いやないわけではないが、取り組む決意、心が弱いせいである。これが経営でも何でも最も重要な課題であるように思う。
ものの出発は先ず"やろう"という心、「改善するのだ。やろう」という心が大事だ。心がなければ行動は起こらない。従って前にも進まない。心があるから行動が起こる。その心の強さがことを成就させてくれる。一朝一夕で解決はしないことだから、じっくり考え、確実に進歩するよう努力していきたいものだ。
さて、昨年1年間の検定成績を眺めてみよう。表1は毎月の検定成績を平均したものである。これによると、1昨年からの授精がうまくいかなかったせいで、平均搾乳日数が215日と、この3年間で1番長くなっている。分娩間隔は、445日で13年より長くなっており、経産牛1頭当り乳量が、これも3年間で最も低い。これは分娩率にもよるが、12年、13年は搾乳牛率(搾乳牛/経産牛)が84%位で、標準とされる85%にほぼ近い。14年が82%となっている。空胎牛が多かったということだ。その通り平均空胎日数が168日と長い。乳量が少ないと当然収入も少なくなる。この辺のところを表2で検定成績の年次別階層別表でみてみよう。
儲けの状態が見られるのが、生乳100kg当り濃厚飼料費で、9000kg台の乳量の農家数が全体の53.3%を占めているが、それの100s当たりの濃厚飼料費が、経産牛乳量はこの3年間で1番少ないのに、飼料費は多くなっている点で、これは注目すべきだ。
酪農経営は、乳牛という動物を相手の仕事だから、わるい要因の積み重ねが後になって悪い結果として出てくる。少しでも早く前触れがあったら処置していかないと、後に大変苦労もし、取り返しの出来ない結果を招くことになるのである。毎月の検定記録を見て、良くない兆しが見えたら、すばやく対応する。いつもより変わった状態が見えたら解らないことは、関係機関等にたずねるなどして即行動することが、経営安定の道のように思う。なんとしてもすばやく心を動かし、体を動かすこと。そう思うのであるがどうだろう。
山口県畜産振興協会 酪農アドバイザー
検定成績年次別比較
表1 全体
|
項 目
|
目標
|
H12
|
H13
|
H14
|
検
定
日
管
理
情
報
|
平均搾乳日数 |
160
|
200
|
199
|
215
|
平均体重 |
|
640
|
639
|
639
|
空胎日数 0〜60 |
|
5
|
5
|
6
|
空胎 61〜120
|
|
6
|
6
|
6
|
空胎 1201〜
|
|
7
|
7
|
9
|
授精実頭数 |
|
5
|
5
|
6
|
授精延頭数 |
|
5
|
5
|
6
|
妊娠頭数 |
|
14
|
14
|
16
|
分娩頭数 |
|
3
|
3
|
3
|
年
間
管
理
情
報
|
平均乾乳日数 |
60
|
65
|
65
|
65
|
平均分娩間隔 |
380
|
455
|
438
|
445
|
平均初産月齢 |
24
|
26
|
25
|
25
|
平均産次 |
|
2.8
|
2.8
|
2.8
|
平均空胎日数 |
100
|
160
|
160
|
168
|
平均授精回数 |
1.6
|
2.0
|
2.1
|
2.2
|
分娩後初回授精 |
80
|
110
|
102
|
108
|
授精実頭数 |
|
30
|
30
|
36
|
授精延べ頭数 |
|
54
|
55
|
69
|
妊娠頭数 |
|
20
|
20
|
23
|
分娩頭数 |
|
30
|
29
|
33
|
検
定
日
牛
群
成
績
|
平均経産牛頭数 |
|
33
|
32
|
39
|
平均搾乳牛頭数 |
|
28
|
27
|
32
|
総乳量 |
|
767
|
759
|
903
|
経産牛1頭乳量 |
|
23.4
|
23.3
|
22.9
|
搾乳牛1頭乳量 |
|
27.7
|
27.5
|
27.0
|
平均乳脂率 |
|
3.78
|
3.80
|
3.84
|
平均蛋白率 |
|
3.20
|
3.24
|
3.28
|
平均無脂率 |
|
8.70
|
8.71
|
8.72
|
1日1頭濃飼給量 |
|
11.7
|
12.0
|
11.4
|
平均濃飼単価 |
|
48
|
47
|
47
|
飼料効果 |
|
2.4
|
2.5
|
2.4
|
総乳代 |
|
73
|
69
|
80
|
総濃飼費 |
|
14
|
16
|
17
|
総乳代ー濃飼代 |
|
55
|
54
|
63
|
乳飼比 |
|
22
|
22
|
22
|
生乳100kg当濃飼費 |
|
2,024
|
2,027
|
1,986
|
1頭
当り
|
1頭平均補正乳量 |
|
9,320
|
9,482
|
9,350
|
経産牛1頭乳量 |
|
8,633
|
8,793
|
8,555
|
|
戸数
|
|
49
|
48
|
45
|
|