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おかあさんの農業教室

景由 剛

 農業共済では、毎月4回農業共済新聞という情報誌を発行している。その中に月1回のペースで「おかあさんの農業教室」というコラムが掲載されているのをご覧になったことがあるだろうか。農業共済新聞は、農業全般を取り扱っており、稲作、畑作、農政が中心で畜産の話題が少ないと思われがちだが、このコラムでは必ず酪農、肉用牛の話題が取り扱われている。もちろん生乳情報、えさ情報、市場情報(県版ではなく、全国の動き)を取り扱っている週もあるが、畜産農家の方が読んで興味を持っていただける「おかあさんの農業教室」を取上げてみたい。

1.お母さんの農業教室とは・・・
 農業の名脇役である(もちろん主役でもある)お母さんにも文字通り分かりやすく農業を解説し役立ててもらおうと、経営改善や農作、畜産について試験場や診療現場のスペシャリスト達が交代で執筆している。現在、酪農はNOSAI群馬・利根沼田地区家畜診療所が、肉用牛はNOSAI連宮崎のリスク管理指導センターが担当されている。

2.どのような話題が・・・
 平成14年4月1週号でNOSAI群馬の中央家畜診療所が、初乳の与え方について興味深いことを書かれていたので紹介したい。
T『初乳の与え方−子牛の体調を見極めて』
〔ある酪農家と出生直後の初乳の与える時期について話題となった。「初乳はできるだけ早期に給与しないと免疫物質の吸収が不十分になってしまう。先日、出生後直ちに給与した子牛が急死してしまったが、欲しがるまで与えなかった子牛はとても丈夫に育っている。」と言う。−(中略)−早期給与を奨励しており私自身もそう指導することが多い。しかし、臨床獣医師になりたてのころ子牛育成の上手な超ベテランの女性が言っていたことをふと思い出した。「初乳は、子牛が欲しがっていればすぐにでも与えるが、欲しがらない子牛はお腹がゴボゴボしていて、無理に与えると元気がなくなり、毛も立って苦しそうな格好をする。こんな子牛には欲しがってから与えている。」と言った。子牛は分娩時に胎水を多量に飲み込んでしまう場合があって、そんな状態で初乳が流れ込んできてもとても消化できる状態にない。それが彼女の言うゴボゴボ状態のことだろうと思う。−(中略)−分娩後初乳をたっぷり飲ませてあげることで、病気に対する免疫物質が子牛の体に入っていく。しかし、それもこまやかな愛情ある観察により、子牛の体調を考えてこそ生きる技術であることを忘れてはならない。〕

新生子の急死の原因はいろいろ複雑で、すべてがこの話に適合しているわけではないが、難産で時間がかかって生まれた子牛のお腹がやけに大きく、胸式呼吸を繰り返し、初乳を与えても元気が出ず翌日までもたなかった経験をされた方もあると思う。紙面を通して、経験を共有してもらい損害防止に役立てていただこうという執筆者の意図を理解していただけたと思う。
次に肉用牛の早期発情再帰にお灸の話をNOSAI岩手の胆江家畜診療所が平成14年2月2週号に執筆されていたので、その際に掲載されていたツボの図を併せて紹介したい。
U『お灸で早期発情再帰』発情を起こさせるツボ
〔お灸の時期−分娩後の子宮の完全修復は四十日前後。分娩後三十〜三十五日の間に1日1回、三日間連続して実施する。発情の徴候は、個体によりばらつくが、多くは五〜十四日後に見られる。二十日経過しても発情の見えない牛には、再び同じように実施する。
お灸の仕方−牛を戸外に出し動かないように固定し、尾はロープで結び股間を通して首に結ぶ。ツボに厚さ3ミリ程度、範囲は乗せる艾より少し大きめにみそを塗る。艾の固定とやけど防止がねらいで厚すぎず薄すぎないように塗ることがポイント。−(中略)−艾が消えるまで牛のそばを離れず、念のため水をかけて終わりとする。当然のことだが、栄養状態が悪い場合、期待した効果は得られない。日常の管理もしっかりとお願いする。〕

灸は一頃ブームになっていたので試された方が多いと思うが、やけど痕だけ残って実らなかったこともあったかもしれない。文末の2行でお分かりと思うが、牛のコンディションによって一様な結果は出ないのである。漢方においても実証虚証、熱証寒証という診断基準があり、「寒は之を熱し、熱は之を寒す」や「壮水の主、以て陽光を制す。益火の源、以て陰翳を消す」の処方の基本が有る。発情も複雑なホルモンの動きによりコントロールされているので単純ではない。また思いなおして試していただきたい。

3.終わりに
NOSAI千葉の地方版の記事 「お母さんの農業教室」というコラムの面白さをご理解いただけたと思う。
「受診時にはノートを携帯−利根沼田地区家畜診療所」など永年畜産をやってこられた方には聞きなれたことや固い内容も多いかもしれないが、発見もあると思うのでご覧になってご家庭や集いなどで話題の素にしていただきたい。
さて、農業共済新聞では、このほか地域の話題も取材して、記事にしている。
いろいろ工夫されている事例や新しい情報があれば、提供をお待ちしている。
NOSAI千葉が、BSE渦から周囲の支援で立ち直った酪農家を取材した記事を地方版に掲載していたので、紹介し終わりにしたい。発生時には思いはかれぬほどの心痛だっただろうが、再出発の意志を「これからも牛と一緒」「負けるな」の文字が現している。また、パーラー前の「おかあさん」の笑顔にも分かる。

NOSAI 山口 事業第2課家畜係

 

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