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無角和牛を使った低脂肪畜産加工品開発

岡崎 亮


 近年の食生活の多様化や高度化、あるいは食品の安全性に関係する諸情勢の影響などから、消費者の安全・健康志向が一層高まっている。そのなかで、ソーセージ等の食肉加工品は、良質タンパク質の供給源として優れた食品であるが、高脂肪、高カロリーであるが故に、健康面ではマイナスイメージに受け取られる傾向があり、健康志向に応えた食肉加工品は少ない。そこで、県内産畜産物を利用し、脂肪分3%以下、カロリー約3分の1(一般ウインナーソーセージ対比)の、健康志向に即した畜産加工品の製品化技術を開発した。また、山口県特産和牛でありヘルシーな赤身肉が特徴の無角和種と組み合わせたヘルシーな製品も試作したので紹介する。
 脂肪は1gあたり9.3Kcalのエネルギーを有する。ソーセージには通常20〜30%の脂肪が含まれ(表1、写真1)、ウインナーでは100g当たり約300Kcalである。脂肪を使わなかった場合のその製品は、硬い、ぱさつく、ジューシーさがない、風味が悪いなどの影響が出る。

 表1 ソーセージの成分組成と熱量      Kcal、g/100g
種      類
エネルギー
水  分
タンパク質
脂  質
糖  質
ウインナー
321
53.0
13.2
28.5
3.0
低脂肪試作品
109
72.6
18.7
2.1
3.9

注:ウインナーは五訂日本食品標準成分表より
試作品は山口県環境保健研究センターにて分析

写真1
ソーセージ原料配合例


 低脂肪ソーセージの製造方法はこれまでも検討されているが、それらは食感を左右する弾力性やジューシーさの悪化から実用的には従来の1/2程度の低脂肪化にとどまっていた。当場では産業技術センターと連携し試作を重ねた結果、以下のような方法で脂肪分3%以下を達成しながら、官能的に通常製品に劣らないソーセージを作ることに成功した。すなわち、生地を作るときに1.脂肪の替わりに澱粉系の添加物(マルトデキストリン等)を使用して低脂肪化し、2.それによるもさつき感等の食感の悪さを、コラーゲン粉末を添加することにより改良し、3.ジューシーさの不足をコラーゲンゲルを細粒の状態で生地に混ざるように添加することにより改良した。このようにしてできた低脂肪ソーセージの生地は、通常の行程同様にケーシング(羊腸や人工ケーシング)に充填した後加熱して製品とした。羊腸の場合は燻煙も行った。製造行程のほとんどは通常の行程と変わらないが、脂肪代替物はあらかじめ製造しておく必要がある。
 低脂肪製品の特性を通常の製品と比較したところ、脂肪分3%以下、カロリーは100g当たり約100Kcalと大幅に下げることができた(表1)。食感では、歯ごたえや弾力を表す硬さ(破断強度)は市販品の硬さの範囲にあり、またジューシーさ(肉汁浸出量)も市販の粗挽きソーセージには劣ったものの、著者が試作した細引きソーセージ(脂肪約20%)よりはジューシーであり(図1)、通常の製品と食感はほとんど変わらないことが解った。また、味はあっさりしている。

低脂肪ソーセージの硬さとジューシーさの比較
図1 低脂肪ソーセージの硬さとジューシーさの比較


 ヘルシーな低脂肪ソーセージに、さらに山口県の特徴を付与するために、副素材として県産品の利用を検討した。無角和種は山口県の特産和牛であり、ヘルシーな赤身肉が特徴である。その無角赤身肉の角切りを低脂肪ソーセージの生地と組み合わせ、ビアシンケン風ソーセージを製造した。両方の低脂肪でヘルシーさを生かし、かつ山口県オリジナルなイメージを付与した加工品を作ることができた(写真2)。これは、薄くスライスして冷たいままサラダやオードブルにして食べることができる。また、やや厚めに切り、ホットプレート等で軽く加熱すると、無角牛赤身肉の香ばしさも楽しめる。


無角和種肉を利用したビアシンケン風ソーセージ
写真2 無角和種肉を利用したビアシンケン風ソーセージ

 ほかにも数種類の製品を試作している。近年飽食化による肥満により子供にも生活習慣病が広がってきているという。この製品は特に、ダイエット食や食事制限用の食事に適すると考えており、肥満や生活習慣病が気になる人や高齢者も安心して食べることができるソーセージであろう。市販化に向けて検討中である。

山口県畜産試験場飼養技術部  専門研究員

 

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