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酪農データベースを活用して牛群検定を見る

遠野 義信

 私もこの仕事に携わるようになってほぼ2年近くになる。当初牛検データーは、改良事業団から1ヶ月1回送られてくるCDの検定成績を、トリニテートソフトで分析し、資料を作成していたが、昨年7月よりインターネットでその都度新しいデーターを取り込み、早く確実に資料を作成できるので、大変助かっている。ただし、検定農家が毎月決められた検定日に検定を行い、確実にまた速やかに記録票を提出していただかないと、新しいものは出てこない。2〜3ヶ月遅れのデーターでは、特に繁殖にかかわるもの等は、ずいぶん後手となってしまう。自分の経営を左右する大事な検定が、疎かにならないよう農家のみなさんには特にお願いしたいところだ。

1 検定成績から
 さて、初めに表2に平成12年と13年の検定成績を牛群全体と乳量のランク別にまとめたのでご覧いただきたい。先ずこれから話をはじめていくことにする。
 この表は検定参加の農家のみの表である。

表1  13年成績より
分娩間隔
戸数
380〜399
6
12.5
400〜419
6
12.5
420〜439
18
37.5
440〜459
9
18.75
460以上
9
18.75

 まず全体表から、12年と13年は「検定日の管理情報」と「検定日牛群成績」は特に変化したところは見えない。しかし、「年間管理情報」では、平均分娩間隔が12年の455日から13年の438日に改善されている。その差は17日である。ただ目標の380日には及ばない。このことを前回も述べたが、正常に分娩した場合で1日乳量を35kgとし、分娩遅延した場合(正常分娩の乾乳期の乳量)の1日乳量を15kgと仮定して計算すると、年間1頭約280kgの乳量を増やしたことになる。ただ目標の380日からは900kgの乳量を損失したことになる。これは全体乳量からすれば大きな数字である。ついでに13年の分娩遅延の最小は383日、最大は540日でその差157日の差がある。表1がその割合である。

 次に表2の最下段の1頭平均補正乳量と経産牛平均乳量が160s程度増加した。これは繁殖成績が向上した現れとみたい。
 表2の乳量ランク別を見てみると、7000kg以下の方が10000s以上のランクより繁殖成績が悪い結果となっている。

 
全体
乳量ランク別
10000
9000s
8000s
7000s
6000s
 
項  目
目標
H12
H13
H12
H13
H12
H13
H12
H13
H12
H13
H12
H13






平均搾乳
日数

160
200
199
211
200
190
200
198
189
234
218
220
227
平均体重
 
640
639
655
639
633
637
642
637
635
603
621
669
空胎日数
0〜60
 
5
5
6
6
5
5
5
5
4
5
5
4
空胎日数
61〜120
 
6
6
6
6
6
6
5
5
4
5
7
4
空胎日数
121〜
 
7
7
8
8
6
7
6
6
11
12
11
8
授精
実頭数
 
5
5
6
6
5
4
5
7
3
4
8
5
授精
延頭数
 
5
5
6
6
5
4
6
7
3
4
9
5
妊娠頭数
 
14
14
16
16
12
14
15
12
11
14
17
12
分娩頭数
 
3
3
3
3
3
3
4
6
2
2
3
2





平均
乾乳日数
60
65
65
69
67
62
64
66
67
69
72
71
68
平均
分娩間隔
380
455
438
461
443
445
437
456
462
490
494
485
449
平均
初産月齢
24
26
25
25
25
26
25
26
25
25
26
28
33
平均産次
 
2.8
2.8
2.8
2.6
2.7
2.8
2.9
2.8
3.3
2.8
2.9
3.5
平均
空胎日数
100
160
160
166
167
145
160
167
143
204
231
183
192
平均
授精回数
1.6
2
2.1
2.3
2.2
1.9
2.2
1.7
1.7
1.3
1.7
2.6
1.6
分娩後
初回授精
80
110
102
104
97
100
101
124
103
164
169
120
145
授精
実頭数
 
30
30
37
37
26
30
30
26
21
28
39
28
授精
延べ頭数
 
54
55
71
72
44
55
49
44
28
37
96
43
妊娠頭数
 
20
20
24
24
17
20
21
17
15
18
24
18
分娩頭数
 
30
29
34
33
27
29
30
27
23
28
33
24






平均経産
牛頭数
 
33
32
38
39
29
32
32
28
30
37
40
29
平均牛頭
搾乳数
 
28
27
33
33
25
28
26
24
53
29
34
25
総乳量
 
767
759
1008
992
713
756
666
607
562
646
688
510
経産牛
1頭乳量
 
23.4
23.3
25.8
25.6
24.3
23.1
21
22.3
20.2
17.4
17
17.6
搾乳牛
1頭乳量
 
27.7
27.5
30.8
30.7
28.6
27.2
25.4
26.1
23.1
22.2
20.2
20.3
平均
乳脂率
 
3.78
3.8
3.72
3.68
3.79
3.82
3.77
3.85
4.18
4.7
3.82
3.79
平均
蛋白率
 
3.2
3.24
3.18
3.22
3.18
3.24
3.23
3.27
3.42
3.18
3.17
3.17
平均
無脂率
 
8.7
8.71
8.66
8.71
8.68
8.71
3.72
8.73
8.82
8.53
8.64
8.63
1日1頭
濃飼給量
 
11.7
12
12.5
13
11.8
11
10.8
11
12.3
11
9.7
12
平均濃飼
単価
 
48
47
48
48
45
46
51
49
47
50
51
50
飼料効果
 
2.4
2.5
2.5
2.9
2.5
2.5
2.4
2.4
2.3
2
2.2
1.7
総乳代
 
73
69
92
89
73
69
60
55
52
58
62
46
総濃飼費
 
14
16
18
20
13
16
13
12
13
18
16
15

総乳代
濃飼代

 
55
54
74
71
52
54
47
43
40
42
46
31
乳飼比
 
22
22
22
23
21
21
24
23
24
28
27
32
生乳100kg
当濃飼費
 
2,024
2,027
1,992
2,018
1,899
1,940
2,149
2,091
2,373
2,530
2,445
2,913



1頭平均
補正乳量
 
9,320
9,482
10,533
10,632
9,517
9,511
8,486
8,587
7,424
7,654
6,860
6,755
経産牛
1頭乳量
 
8,633
8,793
9,436
9,671
8,888
8,865
7,794
7,867
6,578
6,833
6,322
6,541
 
 
戸数
 
49
48
12
11
21
24
12
11
2
1
2
1
%
 
 
 
24.5
22.8
42.8
50
24.5
22.9
4.1
2.1
4.1
2.1
 

 先ず平均搾乳日数を見ると、9000kg以上が200日に対して、7000kg以下では218日、227日と長くなっている。同じく乾乳日数でも9000kg以上が64日、67日に対して7000kg以下では72日、68日と若干長くなっている。分娩間隔については、ご覧のように437日、443日に対して、494日、449日と長い。同じく空胎日数も長くなっている。しかし授精回数は少ないのである。ただし、分娩後初回授精の日数が7000kg以下のほうが断然長い。とすると分娩後の初回授精がはっきりしないか、または発情を見逃して、3ヶ月近くなってから初めて授精に取り掛かっている計算になる。こうした状況から判断させてもらうと、乳量が多いから種付けが悪いと決め付けるわけにはいかないので、私にはどうもこれは熱意というか、取り組む姿勢にあるように思えてならないのだが言い過ぎだろうか。


2 酪農データーベースから
 さて、以上で述べたようなことは、酪農データーベースの「年間管理情報」をみると、円グラフによって検定日と1年前の情報が、一見して問題点が分かるようになっているので便利だ。(図2)

 図2 年間管理情報
年間管理情報

 次に「検定日成績検討表」(図3)では、個体ごとに泌乳ステージに応じた栄養バランスが観察でき、飼養管理の目安となり注目してほしい。特に脂肪率とたんぱく質率、それにP/Fの比率も出ていて栄養バランスの参考となる。このことで最近目に付くのが分娩初期の高脂肪、或いは高蛋白だ。特に前者で5パーセントを越えるものがまま見受けられ、明らかに脂肪肝の疑いがありそうなのも見受けられる。オーバーコンディションであったりするので要注意だ。このように分娩初期の蛋白/脂肪が0.8〜0.9の範囲を外れるものについては、飼料の給与方法、粗飼料の品質等入念にチェックしたいものだ。それと分娩末期いわゆるクローズアップ期の飼養管理を今一度おさらいしたい。
1. 分娩予定日前2〜3週目から濃厚飼料の馴致をはじめて、分娩時には日量3〜4sの給与量とする。乾草などの長モノは飽食させる。
  2. 分娩前1ヶ月は、Ca添加剤と塩の給与は止める。ビタミン剤は適宜給与する。特にビタミンADE剤は分娩前後にわたって1〜2週ごと投与する。
  3. 分娩後は体調に異常がなければ、翌日から1日0.5sの割合で濃厚飼料を増量し、日量が8s位になったら数日間そのままの量を維持し、粗飼料の採食状況と糞便の状態を観察し加減していく。
  4. これ以後は乳量に見合った給与設計にそって濃厚飼料を加減し、粗飼料の採食量はよく観察し体力の回復を観る。調子の悪いときは、嗜好性の良いものを与えていくのは至極当然のことだ。
なお、粗飼料の給与を先にして第一胃内発酵の恒常性を維持する。

図3 検定日成績検討表
検定日成績検討表 

 もう一つ体細胞の「個体リニアスコアの推移」(図4)を見てみよう。牛コードごと過去1年間の体細胞数の推移が見られる。ここにはリニアスコアで表されているがこの方が一見して分かりよい。体細胞数の単位は千個/CCである。


表3 リニアスコア表
リニアスコア
体細胞数の範囲
(千個/ml)
リニアスコア
体細胞数の範囲
(千個/ml)
0
0〜17
5
283〜565
1
18〜35
6
566〜1131
2
36〜70
7
1132〜2262
3
71〜141
8
2263〜4525
4
142〜282
9
4526〜

図4 体細胞リニアスコアの推移
体細胞リニアスコアの推移

 乳汁中の体細胞は、その大部分が白血球によって占められており、乳房炎が起きると白血球が増えて(体細胞の増加)、原因となった細菌を捕食する。
 リニアスコアは、体細胞が2倍になるとスコアが1ランク上がり、体細胞数の平均値で今後の推移を見る場合に利用できる。
 個体の体細胞数を知ることで、乳房炎に罹患した牛を発見し、搾乳順序の変更や淘汰牛の選定が可能となる。これを利用する目的は、乳房炎の罹患状況を調べ、乳房の健康度を知る上で大切だ。
 スコアの6以上の牛は医学的に治療を要する場合があるので要注意である。
 体細胞を減少させる対策として、初産牛と2産以上の牛を分けて搾乳するとか搾乳方法を改善するほか、乾乳期の乳房炎対策を行うことも大切である。

 以上検定成績を酪農データーベースからきわめて概略を述べてみた。

酪農アドバイザー


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