牧場は体験学習の宝庫、池田牧場を探れ

山口県畜産振興協会 清水 誠

はじめに

 防府市にある池田牧場は、JR沿いの住宅地に囲まれた市街地に立地する酪農経営である。現在経産牛42頭の他、子牛・育成牛、肥育牛などを含め合計70頭の牛を飼養している。牛舎はフリーストール方式、堆肥処理は糞尿混合を密閉式強制醗酵で行う、大きなドラム缶を横にしたような装置を利用している。
 平成151111日、池田牧場に近くの牟礼南小学校の6年生58人と先生2人が集まり、「生ゴミによる堆肥づくりの体験学習」と「牛舎の乳牛とのふれあい体験」を目標に「池田牧場を探れ!」というテーマで循環型社会を学んだ。主催は「やまぐち食と緑の県民フォーラム」。フォーラムでは、生ゴミの堆肥化による資源循環の仕組みを進めるため、「循環型社会に貢献する食と緑づくり」をテーマに、生ゴミの堆肥化実証試験を通じた調査・研究活動を実施しており、その一環として牧場と立地する地域の小学生が体験学習を開催することとなった。

体験学習の内容

 「生ゴミによる堆肥づくりの体験学習」では、持参した野菜くずなどの生ゴミを醗酵途中の堆肥に混ぜて堆肥づくりを体験する。堆肥は2月まで池田牧場で醗酵させ、出来た生ゴミ堆肥を花壇の肥料として利用する予定。

 「牛舎の乳牛とのふれあい体験」では、牧場内のウォークラリー、バターづくり、牛乳の試飲。

 体験学習の進行は、環境パートナー3名が行い、池田さんは防府酪農職員や県職員、フォーラム事務局など参加したメンバーはスタッフとしてサポートする体制であった。

体験学習の結果

 「生ゴミ・・」では、牛舎からオガクズとともに出てきた糞尿が堆肥処理施設に入り、さらに、堆肥舎で醗酵する過程を見学した。池田牧場では、水分調整が上手くいっており、70℃近くまで堆肥の温度が上がっていたので、スコップですくって手で触ってもらった。子供たちだけでなく、先生も湯気の出る堆肥に驚いていた。醗酵するという微生物の力を実感できたのではないだろうか。

 「牛舎の・・」では、牧場のことをクイズにしたシートを持ってのウォークラリーを行い、スタッフから上手く答えを聞きだすことが求められた。クイズの答え合わせをすることで、牛乳や堆肥の説明も再度行われ、理解が深まったようだ。それから、牛乳と生クリームを使ったバターづくりと池田牧場の搾り立て牛乳を加熱殺菌しての試飲が行われた。

 スケジュールとしては、全員でウォークラリーをやった後に、2組に分かれて、生ゴミ堆肥とバターづくりの体験学習を行っていたが、途中で、牛の出産が始まったために、子供たちは気持ちが子牛の方へ集中してしまい、環境パートナーの方も苦労していた。陣痛が始まってから約1時間で分娩したので、子供たちは子牛の肢が出るところから出産までを間近に見ることができ、特に女の子は真剣な眼差しでその場を離れようとしなかったのが印象的であった。

 牧場での体験学習は、全国的にも行われており、酪農教育ファームなどの認定制度もある。県内でも、近くの中学校からの依頼が毎年ある。という牧場もあり、酪農経営者も教育の場として牧場を活用してもらうことは大事と考えているようである。一方で、牧場と先生との連絡が上手く行かず、迷惑に感ずる経験をした経営者も少なくない。今回の池田牧場で行われた体験学習では、環境パートナーがかなり下準備をし、成功した例であるが、牧場での体験学習では、数名のスタッフがサポートする体制を取ることが牧場と学校の双方に必要なことだと実感した。

 子供たちに見守られて生まれてきた子牛は、雌であり、3月に池田牧場を訪れたときも元気に餌を食べていた。このような形で、毎年子供たちに感動を与える子牛が生まれることを祈りたい。

持参した生ごみを堆肥の中へ鋤き込みます。
体験学習の進行は環境パートナーの方が行いました。
子牛の出産が始まり、子供たちも真剣な眼差しで
見守ります。

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