肉用牛受託組織による高齢化対策

高齢者でも「安心して牛が飼える」

肉用牛受託組織による中山間地域での肉用牛振興

 

西山マザ−ファ−ム

                           

.指導支援活動の概要

周東町の肉用牛繁殖農家数は、現在19戸であり、そのほとんどが10頭以下の規模である。

生産者の平均年齢は60歳以上が約8割と高齢化が進んでおり、ほとんどの農家で

は後継者がいない状況である。

このような中で、現在の肉用牛受託組織が整備される以前の高齢な農家において、下記要

因により規模の縮小、廃業を決意する農家も少なくなかった。

@ 粗飼料の確保、子牛育成等の労力の負担。

A 後継者不足による先行き不安、規模の縮小。

こうした状況を踏まえ、「西山マザーファーム」という肉用牛受託組織を設立することで、農家

の労力の軽減を図り、高齢者でも「安心して牛が飼える」システムを構築し、地域の肉用牛の振

興に貢献している。

 

 

2.指導支援活動の内容


(1)指導支援活動の対象


  

周東町の肉用牛繁殖農家数は、現在19戸であり、そのほとんどが10頭以下の規模である。

生産者の平均年齢は60歳以上が約8割と高齢化が進んでおり、ほとんどの農家で

は後継者がいない状況である。

このような中で、町内の全繁殖農家の牛を受託管理できる組織「西山マザーファーム」を

意欲ある農家5戸で設立した。


(2)活動開始の目的と背景

 農業従事者の高齢化、後継者不足、経営に対する先行き不安等から縮小、廃業する農家が

多くなっていく状況の中、周東町、JA山口東、(株)周東町農業開発センター、農林事務所の

アドバイスを受けて、周東町肉用牛改良組合の中で、今後の地域肉用牛の振興方法について

協議が行われた。

 その中で、今後の肉用牛振興にとっては、高齢者でも「安心して牛が飼える」体制づくりが

重要であるという結論を見出し、「西山マザーファーム」を意欲ある農家5戸で設立した。

 「西山マザーファーム」の受託業務の内容は、繁殖部門、育成部門の2部門があり、その業務

内容は以下のとおりである。

@ 育成部門

   高齢者にとって、労力の負担の大きい子牛を委託管理することで、労力の低減を図ることを

目的とする。離乳した子牛を預かり、市場出荷まで、乾草給与を主体に「腹づくりのできた

子牛づくり」により市場性の高い子牛づくりを目指している。

受託料 430円/日

A 繁殖部門

   繁殖農家の低受胎牛を早期受胎することを目的とする。委託された低受胎牛を広々とした

畜舎環境で、良質粗飼料多給型の飼料給与で飼養管理し、発情観察の徹底、集中的な

繁殖管理により、繁殖率の向上を目指している。

受託料 445円/日

 


(3)活動の位置付け


   高齢化の進む中山間において、高齢者でも「安心して牛が飼える」体制であり、周東町の

繁殖農家にとっては必要不可欠である。


(4)活動の実施体制

 

      肉用牛受託組織の仕組み 

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


(5)具体的な指導支援活動の内容と成果

 

@ 町内の繁殖農家にとっては、受託組織を活用することで労力の軽減につながった。

(高齢者にとっては、離乳後の子牛の飼養管理、特に床がえ等の作業が重労働であり、

子牛を委託することで労力的負担は軽減されている。)

A 農家の牛飼いに対しての意欲高揚が見られ、増頭に転じる農家もでてきた。

B 受託管理されることで斉一性のある子牛づくりが可能となり、子牛市場での評価も高く

なった。(町内においても各農家により、飼養管理方法、衛生対策が異なるため、市場

出荷牛はばらつきが多かったが、下痢対策と腹作りを重点にした飼養管理により、斉一性

の取れた子牛生産が可能となった。)

C 低受胎牛を一時受託することで、早期受胎が可能となり、委託農家にとって、経済的

メリットがでてきた。

 

 

 

 

 

 


(6)活動の年次別推移


 

年 次

指導支援活動の内容等

成果・課題・問題点等

 

平成9年

 

 

 

 

 

 

 

平成10年

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

平成11年

 

 

既存の西山牧場を利用した、町内の生産基盤づくりについて、関係機関及び生産者で協議がなされた。

 西山牧場利用計画を示し、誰が牧場の運営管理を行うかの(案)に基づき協議を行った。

 

 

 実質の受託組織として、繁殖部門と育成部門の2部門からなる、「西山マザーファーム」を設立した。それにより、受託組織の受け皿が確立された。

 

 当初、西山牧場は、川越牧野組合に管理委託され、一部の農家のみが利用していた。しかし、町内の繁殖農家全戸が利用できるように、既存の周東町肉用牛改良組合を改正し、改良から生産体制までを視野に入れた「周東町和牛生産組合」を立ち上げ、西山牧場を管理する仕組みを作った。

 

 

 

 

廃業農家、繁殖牛飼養頭数の減少が目立った。特に75歳以上の農家については、労力的負担により、いつ廃業になってもおかしくない状況であった。

 

 

 

@ 5月「西山マザーファーム」が設立。

 

 

 

A 6月「周東町和牛生産組合」の設立。

 

 

 

 

 

 

 

平成9年は周東町の繁殖牛は81頭であったが平成11年には、98頭に増頭となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.指導支援活動の波及効果の可能性

 


 

中山間部における肉用牛飼養農家では高齢化が進んでおり、労力的限界及び後継者不足

により、規模の縮小や廃業をする農家が増加しつつある。

今後の中山間での肉用牛振興を考えた場合、労力の軽減及び後継者の問題を解決すること

が重要であり、「西山マザーファーム」のような、何らかの受託組織を立ち上げ高齢者の労力軽

減を図ることが、今後重要になってくると考えられる。

課題としては、受託組織が経営的に成り立っていけるような仕組み作り、体制を整えることが

重要である。

 

 

4.今後の指導支援活動の方向・課題等

 


 

現在、4名の構成員で「西山マザーファーム」の運営を行っており、主に30代

の若手が中心になって、交代制で飼養管理を行っている。

頭数の増加に伴い、作業負担も増加しているため、将来的な運営維持を考えた

場合、労働力の点が大きな課題となっている。

 また、儲けよりも地域肉用牛の振興のため「西山マザーファーム」を運営管理

しているので、経営的に十分とはいえない状況である。

 しかし、高齢化する中で周東町の肉用牛振興にとっては「西山マザーファーム」

は重要な組織であると同時に、県内の肉用牛産地も関心を持ち注目している組織

であり、県内畜産振興のためにも、関係機関の協力のもと維持していかなくては

ならない組織である。

 今後の展開方向としては、周東町は、「高森牛」のブランド名を持つ有数の肥育

地帯でもあり、今後はこの立地条件を生かし、この肥育地帯と周東町及び、周辺町

村を含めたJA山口東管内の生産地帯を結び付け、地域内一貫経営を作り上げるとと

もに、安全な牛肉の生産体制と流通体制を確立し、「高森牛」を安定的に供給でき

る体制を作り、安定した畜産経営ができる体制を作り上げていく必要がある。

 

 

 

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