防長の畜産

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県内の牛群検定の現状と課題

酪農アドバイザー 遠野義信

 わが国の酪農はこの30〜40年の間に欧米酪農先進国と比較して急速なテンポで発展し改良も進んできた。それと併せて酪農を取り巻く環境も大きく変化し必然的に酪農も変わらざるを得なかったこともある。
 山口県も牛群検定を始めて、満19年を経過した。この間の乳牛個体能力の向上と飼養管理の改善と共に、牛群の改良も著しく進んできた。
  しかし一方酪農家個人では対応しきれない、取り巻く環境の変化で新しい時代をどう切り開いていくか、酪農家も指導者も真剣に悩み知恵を働かせていかねばならない時代となってきた。
  私が思うことは、厳しさに耐えかねて脱落していく人が残念である。酪農に情熱を燃やして、逆境こそ転換の好機と捉え、わが経営をどう立て直すか真剣に悩み、知恵をはたらかせ、行動していくかだと思う。いまやる気〔情熱〕のないものは、早晩つぶれる。そんな気がしている。そうならないために、酪農家のみなさんと酪農に携わるものが一緒になって協力し、困難にぶつかっていきたい。
  さて、少々駄弁になってしまったが、こういう厳しい現状だからこそ、牛群検定をやって生産管理、経営管理を着実にやってもらいたい。

表1  平成11年度末の検定実施農家及び検定頭数は表1のとおりである。
年   月
農家
経産牛
搾乳牛
分娩頭数
平均
授精回数
農家
頭数
1戸平均
頭数
1戸平均
初産
2産以上
計〔内雌〕
1戸平均
平成11年10月
46
1385
30.1
1139
24.7
38
105
143(71)
3.1(1.5)
2.1
平成11年11月
46
1403
30.5
1165
25.3
42
132
174(71)
3.7(1.5)
2.2
平成11年12月
46
1414
30.7
1203
26.1
31
118
149(71)
3.2(1.5)
2
平成12年1月
54
1651
30.5
1419
26.2
40
94
134(58)
2.4(1.0)
2.1
平成12年2月
55
1651
30
1438
26.1
27
78
105(47)
1.9(0.8)
2
平成12年3月
54
1646
30.4
1467
27.1
44
87
131(68)
2.4(1.2)
1.9
平成12年4月
53
1627
30.6
1479
27.9
42
73
115(46)
2.1(0.8)
2
平成12年5月
51
1576
30.9
1433
28
56
41
97(45)
1.9(0.8)
2.1
平成12年6月
52
1647
31.6
1453
27.9
36
36
72(35)
1.3(0.6)
2.1
平成12年7月
50
1607
32.1
1338
26.7
26
65
91(39)
1.8(0.7)
2.1
平成12年8月
50
1592
31.8
1276
25.5
39
122
161(70)
3.2(1.8)
2.4
平成12年9月
48
1498
31.2
1216
25.3
25
113
138(70)
2.8(1.4)
2.5
平成12年10月
36
1112
30.8
906
25.1
5
35
40(13)
1.1(0.3)
2.9
12ヶ月計〔平均〕
50
1558
30.9
1335
26.4
41.3
994
1407(633)
28.1(12.6)
2.1
前年成績
45
1411
30.9
1193
26.1
40.4
1077
1481(654)
32.9(14.5)
2.2

 

ここで牛群検定の成績から感ずるところを少し述べてみたい。

1 繁殖遅延による損失

繁殖問題は、コスト低減の最大課題である。

分娩間隔を見てみると、440日以上が全体の60%以上とかなり高い比率だ。
目標の380日より60日〔2ヶ月〕以上も遅延している。これを損失乳量で換算すると年1頭あたり900〜1000kgの損失だ。

  440−380日=60日

   分娩遅延60日の1日乳量15kg
   正常分娩60日の1日乳量3kgと仮定して
これが全体頭数に掛けるとかなりの損失となる。
形に現れない損失であるからこそ、検定情報に常に注意を払っていただきたい。

2 繁殖遅延の要因

 繁殖の問題は栄養管理によって、大きく影響されるので、今回は改良事業団が開発したソフトを使って乳成分のF%、P%の動きとバランス、特にP〔乳蛋白〕率の動向から繁殖状況を見てみた。
 それによると、分娩後70〜80日になってもPが3.0%をきっている場合は、おおむね繁殖がうまくいっていない。
 乾乳後期から分娩初期間のCPやTDN不足から卵胞の発育がうまくいっていない結果だ。分娩前後の栄養管理の良し悪しが繁殖に大きく影響する。
 これは高泌乳牛でも食欲旺盛ならば例外はないように思う。よく酪農家で乳量の高い牛は繁殖がうまくいかないという人がいる。表2を見てほしい。

表2 検定成績      H11年1/1〜12/31
 
FAT
(%)
P
(%)
SNF
(%)
平均乾乳
平均分娩
平  均
濃厚飼料
濃   飼
生乳1kg当たり
日 数
間 隔
搾乳日数
給与量
平均単価
濃飼費 円
10000kg以上
3.88
3.23
8.76
61
428
251
2,949
42.0
11.5
9000kg以上
3.93
3.18
8.65
62
455
259
3,177
45.8
15.6
8000kg以上
3.74
3.20
8.65
67
454
255
2,804
48.0
15.8
7000kg以上
3.88
3.20
8.66
62
436
263
2,989
50.3
19.4
6000kg以下
3.92
3.24
8.66
71
479
250
2,460
55.6
21.5

 これによると牛群全体乳量が10000s以上の農家の分娩間隔は、他の低い牛群の農家より短いという結果が出ている。
乳量の高低ではなく、分娩前後の栄養管理の失宜によってコストを低減できることを再確認していただきたい。


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