気ままに現地レポ

 酪農発表大会に行く(沖永さん編)・・・山口県畜産会 清水誠

 平成10年4月23日、山口市湯田温泉にあるホテル「常磐」で、西日本酪農青年婦人会議主催の酪農発表大会が行われました。経営発表の部に続き、意見・体験発表が行われました。長門康子さん(岡山県)、杉浦玲子さん(鳥取県)、宗方秀樹さん(広島県)、竹葉敬正さん(愛媛県)、そして山口県から大島町の沖永明子さんが発表しました。

 沖永さんとは昨年から経営診断でお付き合いをするようになりました。第一印象は、「何と元気におしゃべりをする奥さんだ…」ということ。ご主人もかなりの熱血漢で、最初は「畜産会?用はない…」といった剣幕。はたして、経営調査ができるかな?と不安になったものでした。しかし、いろいろ話をしてみると大変熱心な酪農家で、自分のポリシーをしっかり持ったご主人ということがわかってきました。奥さんもご主人が一言「おまえはだまっちょれ」というと「はい」と今時珍しい良妻ぶりでした。

そんな沖永さんも、発表することに決まると、「私は人前では…」と言っていたのはどこ吹く風で、何度も原稿を書き直し、現地関係機関の方と何度もリハーサルを重ねるほどの熱心さだったそうです。わたしも、2回ほど発表を聞きましたが、よく響き渡る声で堂々と語る沖永さんはとても生き生きとしていました。いったい彼女は何者なのでしょうか。なんと、学生時代テニスの選手。当時の写真がスライドで出てきましたが、どうも後ろの来賓席に座っているのは皇族の方?すると、全国大会?ただテニスをやっていただけではないようです。そして、22歳のとき心に決めたご主人とは北海道に駆け落ちをしたそうです。プロポーズの時の会話です。

ご主人「大島で両親を見たい、そして牛を飼いたいがええか」

明子さん「農業をしたいんならやればええよ、あなたの好きな仕事をしてほしい。でも私は何もわからないし、何もできないよ」

ご主人「何もわからんでええ、何もできんでもええ」

でも、一緒になってからは

「何でわからんのじゃあ、何でできんのじゃあ、お前は一から十まで言わんにゃわからんのじゃけんのう。」と言われ続けているそうです。

とても良い関係だと思います。沖永さんの牛舎に行ってみると、こんなところに、とびっくりするほどの山の中腹に位置しています。何と二人で0から作った酪農です。そんな沖永さんの経営の信条は

  1. 牛とともに楽しく
  2. 先端情報の収集。なんと、飼料自動給与装置、細霧冷房システム、そして、自動離脱装置を装備しており、省力化を図っています。
  3. 牛の能力を発揮させるための投資に心がけ、「美しくまっ白い牛乳を生産すること。そして農業を守り続けていくこと」が酪農家の使命と考えている。

と力説されました。さらに、ヘルパーを活用できるようになってからは、グリーンツーリズムに興味を持ち、通信教育やスクーリングにも参加するようになりました。もちろんゆとりの一貫として。また、高校生などのホームステイを積極的に受け入れ、農業の体験を通じ農家生活、酪農を理解してもらっているそうです。大島酪農婦人部ができたことにより、女性も正組合員となり、仲間の連帯感も強化され、スポーツや研修会への参加も増えたそうです。

今後は、限られた土地条件ゆえ、個体能力の更なるアップを目指し、今まで以上に夫に協力して「牛とともに楽しく」酪農経営を続ける決意で発表を締めくくりました。きっと今日も、沖永さんの牛舎からは「何でわからんのじゃあ、…」というご主人の愛の怒鳴り声が響いていることでしょう。

写真;堂々と発表する沖永さん

 

 

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