平成11年8月28日

 突然ですがうちは家族経営です。県内のだいたいの牧場がそうでしょうけど、何が困るかっていうと、遊びに行けないことです。いえ、遊びには行けます。ただし一人ぼっちでお昼から夕方にかけての何時間かに限られます。何回もアピールしますが、私はまだ若くて、言ってみればまだ遊び盛りです。この1年半、親と衝突した原因はだいたいが「休み」についてです。

 私がもし正式な従業員として雇われている若者だとしたら、たぶんお休みも堂々ともらえるんでしょう。ところが家族だからこそ、融通がきかないんです。父は私がどんな男の子と遊びに行こうがまったく興味がないらしいんですが、それは仕事に間に合うように帰ってきた場合だけ。休んでまで遊ぼうとすると「もう一切牛舎には来るな。出て行け。あんたなんて酪農やってなかったらただのカスよ?わかっとる?」一気にまとめてここまで言われてしまいます。

 父親って普通娘には甘いんじゃないの?友達のうちとなんか話が違う、と何回思ったことでしょう。酪農では、あてにならない人材は全く必要ない、これが父のポリシーその1です。確かにそうなんだとも思います。分担していた作業を突然一人でこなさないといけないとなると、段取りが変わってしまいます。たまに、けんかになってでも出かけることもありますが、なぜか休んでまで遊びに行った日は、自分があんまり楽しめないということです。これは性格だと思います。つまり私は親思いのいいヤツなんですね、根が。えへへ(^▽^)。

 当たり前なんですが、酪農には「店休日」にあたる日がありません。なんて忙しい仕事を持った家に生まれてしまったんだろ、私ってかわいそう、若いのに…と思わずにはいられません。そのかわり、休まずにがんばった分収入で笑うことができるのも酪農のいいところです。

 働きたくてもどうしても休みをとらないといけない、その日は休まなくても給料にはならない、というOLの友達の話も聞きますが、酪農の収入に関して有名なのは、安定してくれないことではないですか?ボーナスも退職金もないし。でも、言ってみれば土日祝日も働き放題(=収入に上限がない)です。これは実は父のポリシーその2です。これまた言われてみればそうなんですね。ただ搾って出荷すればいいなら酪農ってなんておいしい仕事なんだと思います。

 でもどんな仕事にもいろんなトラブルが発生しますよね。どんなに気をつけていても乳房炎になってしまった牛の乳は出荷できないし、電気屋さんが来られない時間帯に起こった機械類のトラブルはなんとか直さないといけないし、堆肥場も増設しないといけなかったし、牛がえさを食べなくなったら原因を探らないと死んじゃうし、正常に産まれてきそうにないときなんて私は苦しそうな親牛を見て泣きわめいたこともありました(ま、泣きわめくのはトラブルとは言わないか)。それを20年以上にわたってなんとかやってきた両親をマジですごいと思うことがあります。

 とにかく何でも自分たちでできないとダメなのです。基本も応用も知ってないとダメだし。でももっとすっげーと思うのは、父は今51歳なのに、まだまだこれからじゃんじゃん搾る気でいることです。規模も拡大したいと思っているかもしれません。正直言って、うちの収入からしたらもうちょっと貯まっててもいいんじゃないかと思います。なのに今ひとつ貯まってくれてないのはいろんな分野に投資してるからです。人が「こうしたらいい」と勧めるものはまず試してるみたいだし、それで結果を出すためには試行錯誤する時間分の商品代金もかかりますから。

 そんな姿勢に母は「業者にとって、うちはいいカモになっているんじゃないか」と心配していますが、結果を出しているので父は勝ちだと私は思います。購入している間は業者も負けじゃないけど。父のポリシーその3は「いいものは試す、そして結果を出す」が正解です、っていつからクイズになったんだ?経営って大変だけど父はどちらかというと楽しそうです。なんと言っても牛舎にいる時間が長いのがその証拠です。(え?もしかして家に帰りたくないんじゃないのか?お父さん!)でも、そのくらいのめり込んで初めて結果が出せるんだと思います。なんせ相手は生き物で、言葉が通じないんですもんねぇ。で、時間をとるかお金をとるか、ですよね。そりゃー…

 お金でしょう!あれ?書いてるうちに矛盾が…。さ、仕事仕事。

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