国産鶏肉の販売促進を図る為に
 (薬剤耐性菌のない鶏肉生産と販売促進)

深川養鶏農業協同組合     
生産部長 日 高 秀 次 

は じ め に

 一昨年であったろうか、 NHKのクローズアップ現代でVRE (バンコマイシン耐性腸球菌) の問題が、 取り上げられました。 バンコマイシンは、 MRSA (メチリシン耐性黄色ブドウ球菌) に効果のある唯一の抗生物質です。 1984年頃から日本に於いてもMRSAの病院内感染が大きな問題となり、 私の友人のお母さんも、 足の小さな手術の後、 このMRSAに感染してなくなりました。 1991年日本でもMRSA感染者の治療薬としてバンコマイシンが使用されるようになりましたが、 その2〜3年後には、 ヨーロッパでVREが出現しております。

  1.  薬剤耐性菌の出現
  2.  クローズアップ現代によれば、 私共が1996年の始めまで、 抗グラム陽性菌 (クロストリジウム・ブドウ球菌等) 剤として飼料の中に添加していたアボパルシンが、 バンコマイシンとほぼ同じ化学構造式を持ち、 このアボパルシンに対する耐性菌が、 イギリスの養鶏場で出現、 バンコマイシンの耐性菌になったというのです。 1996年には、 日本でもすでにVREが発見されています。

     畜産の世界では、 成長促進剤として、 抗生物質や合成抗菌剤が、 治療量に比べ極めて少量飼料に添加されて来ました。 このような使い方は、 細菌が薬剤耐性を得るのに最も条件の良い使い方です。 私共が飼料の中に、 今までのような量で薬を入れて行く限り薬剤耐性菌は、 畜産業界からどんどん出現して来るでしょう。

     先日、 生協の世話役の人とお話をする機会がありました。 その席で消費者の望む鶏肉についてお話を聞かせて頂いたのですが、 消費者の望む鶏肉とは、 肉の中に病原微性物が居ない事、 残留薬物がない事、 安価である事等でありました。 VREの事を考えると、 これに加えて薬剤耐性菌が居ない事を付け加える必要があると思われます。

     

  3.  薬剤耐性菌の居ない鶏肉の生産
  4.  これは非常に難しい問題です。 まず第一にブロイラー農場において薬 (飼料に添加する薬・治療に使う薬とも) を全く使用しないシステムをつくる事ですが、 現実には、 年間何百ロットもある鶏群に全く病気を出さないという事は、 ほんとうに難しい事です。 又、 ヒヨコ由来の薬剤耐性菌も居ないわけではありません。

     とは言いましても、 ブロイラー農場で飼料の中に全く薬の入らないものを使用し、 又、 治療薬も出来るだけ使用しないようにすれば、 ブロイラー農場での薬剤耐性菌の出現率は、 飛躍的に減少するはずですし、 絶対に鶏肉中に薬物が残ることはありません。

     国産鶏肉の販売促進を図るためには、 育種の改良は、 もちろんの事ブロイラー (種鶏を含む) に携わる人間すべてが、 このような事を心がけ、 薬を使わなくても良い環境づくりを行い、 高くても有効性のあるワクチン (IBD・REO・MG・SE等) は使用すべきだと思います。

     

  5.  HACCP (危害分析重要管理点方式)
  6.  最近、 どこにいってもHACCPと言う言葉をが聞かれます。 HACCPの言葉の由来については、 すでにご承知の方が多いと思いますが、 1960年代アメリカのNASAが月に人を送るのに際し100%安全な宇宙食を作るようビルスベリー社に求めたのに対し、 同社がそれまで行っていた最終製品の検査 (最終製品の検査だと95〜97%の保証は出来るが100%の保証は出来ない) 方法に代えて、 自動車工業界で使われていたFMEA (失敗する様式) 概念とその効果分析方法を食品工業に応用してつくりあげた方法だそうです。

     具体的には、 原料の搬入、 受取から製品の出荷に至るすべての工程について、 工程毎の危害を予想しこの危害に対する対応策を作り、 これが実際に実施された事を確認しこれを記録に残すことです。

     畜産業界に於いてビルスベリー社が、 宇宙食を作った時のように工程を極端に細分化して対策をとりチェックする事は、 経済的にみて到底出来るものではありませんし、 又、 宇宙食や、 そのまま食べるお菓子のような品質基準が求められることもありません。 しかし、 より安全で安心の出来る製品をつくるのは、 私共の義務ですので、 少しでもこれに近づける努力をせねばなりません。

     HACCP方式の導入に当たり注意すべき点は、 如何にチェックポイントを少なくするかであり、 チェックしなくても良い部分を多くするかです。

     私共の業界では、まだHACCPと言えば、 製品がクリーンになると思っている節があるように感じられますが、 チェックリストを作成し、 チェックしても検査結果が良くならねば、 全く意味がありません。 検査回数は結果が良くなるまでは、 各工程毎に出来るだけ多く、 結果が良くなっても、 定期的に行う必要があります。

     

  7.  100%無薬飼料への取り組み
  8.  さて、 私共の組合は、 年間、 雛1000万羽、 ブロイラー600万羽の生産、 処理、 加工、 販売、 金融、 お菓子の製造販売等を行っていますが、 平成9年5月よりブロイラー飼料の一部を、 前期・後期とも100%薬の入らない飼料に切替え、 11月からは月間50万羽のすべての飼料を無薬に切替えました。 最初の試みよりあと2ケ月で2年が経過致しますが、 お陰様で育成率、 体重、 要求率といった成績面の低下もなく順調に推移しています。 しかしながら、 この低迷相場の影響で、 生産農家 (組合員) の努力が全く報われないのが真に残念です。

     私共のブロイラーにも以前マレック病が多少認められ、 鶏肉からもサルモネラBGI (ID・TEST……あまり毒性のない菌) が年に何回か認められましたが、 100%無薬飼料に切替え、 この消毒方法に切替えてからは食鳥検査に於けるマレック病は、 1件もなく、 又、 サルモネラも全くないとは言えませんが、 検査結果では、 すべて陰性となっています。 種鶏場から処理場までの消毒の徹底により、 組合全体として病原菌が非常に少なくなっているのは、 間違いないと思います。

     私共の携わる国産鶏 (GP・PS・CM) は、 MG・MSは、 もちろんの事、 SE等を持たないように飼育をし、 病原菌のより少ない鶏肉を生産していけば、 おのずと消費の拡大に結びつくのではないでしょうか。

     

  9. 当組合のシステムとHACCP
    1. PS農場
    2. 育成場

      成鶏場

      第6種鶏場

      7種鶏場(美東町)

      8種鶏場
       

      移動

      →  

      第3種鶏場(日置町)

      4種鶏場( 〃 )

      5種鶏場(長門市)

      (国産増殖センター)

      各場毎のオールイン

      オールアウト方式/td>

      (0〜20W)

      (21〜65W)

      PS導入時MG・MS・SP・ND・IBD等の抗体検査

      育成期・成鶏期とも毎月1回抗体検査

      定期的に牽引スワップ法による成鶏舎のサルモネラ検査

      各場の水の細菌検査等

       

    3. CM農場

    4.        (おおむね市町村毎のオールイン・オールアウト方式)

      CM農場に於いては、前期用飼料・後期用飼料ともすべて無薬飼料を使用

      CM農場の消毒プログラム

      −25日

      −22日

      −18日

      −15日

      −10日

      − 3日

      − 2日

      ブロイラー出荷

      除糞完了(組合の鶏糞処理場で除糞する)

      掃除・水洗完了・パコマで消毒

      ゼクトンで消毒

      石灰乳を床面塗布、鶏舎周囲に石灰の散布

      入雛準備完了

      スイングフォッグによるグルタンクリーンの煙霧消毒

      入雛

      ※消毒薬の量についても
       細かい指示

      出荷から入雛までのチェックポイント

        1. パコマで消毒した日と薬量
        2. ゼクトンで消毒した日と薬量
        3. グルタクリーンで消毒した日と薬量

    5. 飼料の配送
    資 料

    工 場

    当組合の
    トラック
    当組合

    ストック

    ポイント

    当組合の
    バルク車
    PS農場
    資 料

    工 場


    当組合の
    バルク車
    CM農場
    20tサイロ20基(400t)

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