社団法人 無角和種振興公社
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〈無角和牛の生産振興〉
無角和牛の再生に向けての課題は大きく分けて2つある。
1つは、 輸入牛肉の台頭と黒毛との価格差を埋める低コスト生産である。 「繁殖センター」 は建設当時から省力牛舎を指向し、 スタンチョン方式による群飼育で、 糞尿もオガクズ吸着方式による敷料をショベルローダで一気に処理できる。 飼槽も通路から落とし込みができる給与方式である。
繁殖センターの隣には、 1.5haの草地を整備した。 周りに牛柵を施し、 無角の飼育に適した放牧も可能となっている。
そして、 何と言っても近隣に粗飼料生産基地として、 15haを国営の事業により造成した飼料畑がある。 飼料用の管理用機械もいわゆるロールベール体系によるロールベーラ等の機械を一式導入し、 良質のサイレージを生産している。
さらに、 肥育経営も取り組んでいる。 繁殖農家だけでなく、 肥育農家も激減しており、 繁殖と同様、 低コストで生産できる無角の肥牛を公社自らが実証展示するべく、 80頭規模の肥育施設を整備した。 肥育マニュアルを検討し、 濃厚飼料の給与はなるべく少なくし、 肥育前後にサイレージを多く使うマニュアルになっている。
平成7年4月に農家からの導入牛が57頭でスタートして、 平成10年現在、 170頭程度規模の一貫経営が年間50頭余りの肥牛を出荷できるところまでになりようやく回転し始めたところである。 施設は概ね完成したものの、 本当の意味での低コスト生産はこれからである。
当公社では、 無角和牛種低コスト生産技術開発プロジェクトと称したプロジェクトチームを組織し、 現在の経営内容をチェックし、 飼養頭数規模の妥当性から未利用資源の代替利用、 敷料の代替利用、 放牧の実施、 自給飼料生産のコスト低減等、 低コスト化に向けてのあらゆる方策を検討している。
〈ヘルシー牛肉の販売〉
無角和牛再生に向けてのもう1つの課題は、 流通消費である。
価格をすべて市場に預けてしまったため、 サシ指向の消費者動向の中、 サシの入らない肉とのレッテルが一度貼られてからは、 飼養頭数同様、 価格も相当の勢いで落下していった。
このため、 当公社立ち上がりの時からの価格の安定のための産直体制による取引を前提とした流通方式を指向した。 いわゆる無角和種産直拡大協議会がこれで、 繁殖農家、 肥育農家、 流通販売業者が参加し、 一体となって無角和牛の生産から流通消費を一貫して促進していこうという組織である。
平成8年に立ち上がった産直拡大協議会では、 いわゆる評価購買方式という一定の取引価格を決定し、 牛の流通をするもので平成9年から始まっている。 しかしながらも現在の肉の評価のポジションはなかなか、 生産・肥育側も流通販売業者側も利益が薄い状況にある。
そこで、 昨今の消費者の健康志向が高くなっている中、 サシのないことを逆手に取った赤身肉のヘルシー牛肉と地元生産の飼料による飼育で安全な牛肉としての付加価値を付けた無角牛肉のブランド化を進めている。 全国で山口県のこの阿武萩地区にしかない、 しかも角のないという見た目にも非常にわかりやすいキャラクターである。
平成8年から当公社の所在する阿武町で無角和牛まつり (じゅーじゅーまつり) と称して10月10日の体育の日に焼き肉をメインにしたイベントを開催している。
パックにはかわいいキャラクターシールを貼付して販売するようにしているし、 農家の顔と牛舎の写ったパネルや無角和牛の説明の入ったレリーフも作成し、 店頭に置くなど、 安全性もアピールしている。 また、 県内各地の販売業者の店舗で随時試食会を実施する等、 まずは消費者に食べてもらって評価してもらっている。 アンケートの結果もまずまずで自信を深めているところである。
いまのところ、 年間50頭程度の肥牛の出荷規模であり、 流通販売業者も数者程度あり、 これを特定販売店としている。 今後は注文販売や地元のJAの店舗に並べることなどして消費者の要望に応えられるよう検討している。
とにかく、 販促により現在より高い価格で取引できれば、 生産者も流通販売業者もともに利益を得ることが出来、 頭数も拡大することとなる。
生産振興と流通消費は車の両輪であり、 どちらが欠けても無角の将来は立ち行かないことになってしまう。 低コスト生産で安全な牛肉を適正な価格で消費者へ届けることが実証展示できれば、 もう一度農家に無角和牛を飼ってもらえるはずである。 今後も当公社を中心に県、 阿武萩の市町村、 農協、 関係団体等のご指導ご協力を賜り、 無角和牛を地域の特産として育ててゆきたいと決意を新たにしているところである。
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