豊   関 (ほうかん)  の   畜   産

〜中山間地域における畜産の位置付け〜

JA豊関営農販売部 営農振興課次長 竹 原 隆 晴  

 

1 自然概要

  当地域は山口県の最西端に位置し、東は美祢市と山陽町、西は日本海、南は関門海峡を挾んで九州と接し、三方を海に囲まれ、北は大津郡、長門市と接している。

 鉄道は瀬戸内海側を山陽本線、日本海側を山陰本線が走り、両線は県内最大の都市である下関市で接合している。

 主要道路は鉄道に沿って走り、日本海側を国道191号線、瀬戸内海側を国道2号線、国道435号(山口〜豊北)が横断し、県道34号(下関〜長門)を縦断しており交通の便は良い。さらに中国自動車道のインターチェンジが、下関市小月と下関市内の二ヵ所にある。また現在、下関市吉田に山陽自動車道のインターチェンジが建設中である。

 

2 農畜産物の概要

 地域の特性について区分すると都市近郊地域(下関市・豊浦町)、中山間地域(菊川町・豊北町・豊田町)に分けられる。そこで下関市、豊浦町の沿岸部では野菜、花卉が中心に産地化され、内陸部では乳用牛、水稲が主な作物となっている。

 又、中山間地域の菊川町、豊田町で水稲を中心とした野菜、果樹、肉用牛、乳用牛の複合経営が主となっている。豊北町では水稲を中心とした肉用牛、野菜等との複合経営が主として営まれており、企業的採卵養鶏場もあるが、近年に国営農用地が開発され、野菜・果樹・酪農・肉用牛の専業農家を中心とするほか、水稲と中規模肉用牛飼養農家の複合経営があり、これらの伸展が期待される。

 

3 畜産の位置付け

 平成6年度の「農業粗生産額」をみると管内全体で米の41.3%、ついで畜産25.0%、野菜20.5%、果実3.2%、で分るように、米・畜産・野菜のウエイトが高い。

 市町ごとの作目別割合をみると米では豊田町56.9%、豊浦町51.1%、菊川町51.8%、豊北町34.2%、下関市33.2%となっている。畜産では豊北町48.8%、菊川町36.2%、豊田町30.9%、豊浦町15.0%となっていて、畜産は管内において基幹作物として地位を築いている。野菜では下関市37.9%、豊浦町で20.1%と都市近郊地域で盛んである。

 

4 「畜産粗生産額」

 以上のように管内全体の畜種別内訳では鶏の46.0%、乳用牛29.3%、肉用牛23.8%、の順となっており、鶏では大型採卵経営によるもののウエイトが高い。

 各市町における畜種別の占めるシェアについては、肉用牛では下関市39.0%豊北町22.5%、豊田町で21.5%の順となっている。その中で下関市は一大型肥育経営によるものである。

 酪農では下関市45.0%、豊田町40.0%、菊川町27.5%、豊北町20.0%となっているが、近年、国営開発農地入植者による豊北町が伸びている。

 鶏では菊川町53.4%、豊北町57.2%、豊浦町34.5%、豊田町37.1%、下関市12.8%となっている。

             JA豊関管内の家畜飼養頭数H9. 2. 1現在 

 

肉用牛(繁殖)

肉用牛(肥育)

乳用牛(搾乳)

乳用牛(育成)

合計

戸数

219

61

73

 

353戸

頭数

1,037

2,333

1,611

910

5,895頭

 

5 実践している課題

 @ 中核飼育農家の経営安定

 A 水稲との複合経営の定着

 B 専業農家への指導体制の確立

 C 事業導入による畜産基盤の整備

 D 組織の活性化による飼養意欲の向上

 

6 目  標

 標記の課題を推進しているが、畜産を取り巻く状況は今後も楽観を許さない。そこで、個々の問題を的確に捕えて、肉用牛(生産)・酪農に特化している地域の振興をどのように推進するか、課せられた使命である。

 まず、畜産経営の安定を図る場合、土地基盤を基軸とした水稲との複合経営は今後も定着を推進すべきで、このことが耕畜農家の糞尿処理等の問題解決になり、また耕種農家とのイナワラ交換、有機質の投入で地球にやさしい農業、また安全で、

おいしい農畜産物の供給ができる。

 特に、将来に向かって米価の値下がりは続くと予想される中、農業所得の目減りを何で乗り切るか模索したところ、(例えば転作が3割以上、米換算反収8俵で金額にして312千円)子牛一頭(33万円)以下となる。

 ここで云いたいのは転作率40%近くとなれば、中山間地域においては水田農業との複合経営(畜産)で農業所得を上げる計算も必要である。

 また、高齢化等の課題がある中、既存畜産農家はもとより新規農家の生産牛1頭飼養運動を起こし、これの実現が米価値下げ、及び転作率強化にも対抗できる、足腰の強い中核的農家群の育成と経営規模の拡大を推進することで、肉用素牛生産基地としての産地化を堅持する。

 また指導面の機構改革を余儀なくされ、経済事業と一体となって指導事業を実施し、専業農家対策を最重点として捕え、品目ごとの専任制を導入して指導基盤の強化をはかる。

 ここで、注目しなければならないのが中規模畜産農家の経営安定が要求され、専門指導員にとって責任が一段と重くなる事を肝に銘じ、また日常の実践活動で大規模飼養農家の生活のゆとりを取り入れた畜産経営も同時に考えた現場対応が不可欠である。

 生活にゆとりといえば、酪農家においてヘルパー制度を導入しているが、肉用牛農家においてもヘルパー制度を導入、または一時預かり施設(公共牧場)の整備

を合わせ急ぐ必要がある。

 平成12年度に向けて、地域個々の要望を集約して調査がすすめられている、公共事業(畜産基盤再編整備事業)で安定的経営体群の育成を図り、市・町・関係機関の支援の下で、地域畜産の活性化に期待したい。

 最後に畜産基盤の拡充と組織の活性化が不可欠であることはいうまでもないが、とかく合併前の地区の行事の消化となりがちな部会(組合)活動を今まで以上に充実をはかる為に、畜産連絡協議会を核として各関係機関と連絡・調整を密に展開をはかる。

 1 研修会・講演会の積極的な参加により管理技術の向上と仲間づくり

 2 経営体質強化を図りながら、畜産農家相互のと安定的発展を目指す

 写真:角島牧野1

 写真:角島牧野2

目次へ戻る