中山間地農業に活力を求める   
  阿東和牛の里づくりを目指して

阿東町農業協同組合
  組合長 三 浦 幸 之


 1 は じ め に

 わが阿東町は、 阿武川の源流十種ケ峯や、 中国山脈の裾野に広がる、 標高300mから400mの典型的な中山間地の農業地域である。 中でも米は消費市場に特別高い評価を得ている様に、 米、 牛、 りんご、 梨、 野菜の特産に特徴のある農業生産の町として一定の評価をもって粗生産額50億円を挙げている。
 その中で米は今年も10万俵を超す集荷のうち、 コシヒカリは1,100haで75,000俵の集荷があって 良質米 「あとう米」 の名声を高めると共に各作目の安全、 高品質で消費者ニーズに応えられる農業生産を挙げることが出来たところである。

市場前日の子牛共励会
 2 阿東町和牛改良組合の沿革

 戦後、 経済成長と共に牛が農耕使役の役割から解放され、 畜産経営として新たな時代に入り全国的な全国和牛登録協会のもとに、 和牛改良組合の設立認定に合わせて、 昭和47年10月に無角和種で阿東町和牛改良組合として認定。 その後、 黒毛和種が導入され、 昭和61年黒毛和種を加えることで、 改めて阿東町和牛改良組合の認定を受け、 改良事業に積極的な活動を進めているところである。


 3 阿東町農業と畜産の位置付け

 最近、 有機低農薬による農産物の安全で美味しい高品質性が消費者から強く求めているが、 これに応えるには、 良質な堆肥による土づくり事業を進めて、 よい土と自然を生かした健全な作物を栽培することが基本となる。
 従って本町の2,000haの耕地に、 2,000頭の牛から生産する有機資源は農産物の良品生産、 地域農業の展望を招く上からも、 「阿東和牛の里づくり」 は必須条件である。

市場出荷前の削蹄
 4 阿東町畜産の飼養状況と活動

 平成7年の飼養頭数は次表のとおりである。
   大家畜飼養頭数               平成7年度2月1日調査
繁殖牛肥育牛子牛・育成牛乳用牛
5038212484552,027

 牛肉の輸入自由化への対応策として、 生産から肥育、 食肉の販売まで地域内一貫システムの確立に事業導入をもって、 地域畜産の発展を期しているところであるが、 頭数の減少傾向が続いている。 ところで改めて事業内容に検討を加え、 更に時代に合った畜産の展開を求める必要がある。 そこで取り組んでいる事業は次のとおりである。

JA阿東町肥育センター
 ● 子牛育成巡回、 市場出荷2ケ月前、 年6回
 ● 育種価に基づいた雌子牛の地区内保留をはかり市場前月の子牛共励会の開催
 ● 毎月繁殖検診の実施
 ● 地域畜産活性化対策事業を進め、 阿東ブランド牛の確立
 ● 牛肉の地場消費の拡大


 5 牛肉の輸入自由化に対応する畜産の課題

 平成5年、 本格的な輸入自由化を迎えて肉牛経営は農家の老齢化と共に、 新たな対応を迫られている。 当組合は平成4年、 300頭規模の肥育センターの建設・運営をはじめ、 生産・肥育地域 一貫システムを進めてきたところである。 しかし厳しくなってきた畜産環境汚染問題に十分な対策はまだで、今からの課題である。

肥育センター内部

阿東和牛の里づくりの標識

 中山間地域の特徴ある耕種農業の農の心を、 多くの消費者に提供するためにも、 畜産の規模を 維持することは欠ぐことのできないことで、 阿東の農業に一番大切なことと言わねばならない。
 組合事業である集団施設等で農家が繁殖〜肥育の一貫経営を行う場合は、 農家がリスクを伴わない仕組で農家の参画のもとに、 地域畜産の新たなタイプの中核経営は出来ないものかと模索中である。しかし、大切な事は窮極の販売が絶対的な条件となる。
 Aコープで販売している牛肉は、 年40〜50頭程度の肉量では量的に間に合わないくらい売れていることから、 地場消費拡大の直販を新たに計画したいと考えている。
 農産物の輸入自由化により肉牛経営が価格の変動に晒される今日、 地場消費の拡大は自ら解決する。 またしなければならない肉用牛経営の要件であり、 且つ組合のこれからの責任である。




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