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家畜を飼っていると、その中には病傷事故を起し、図らずも死亡事故につながるケースがある。
牛・豚等の家畜が死亡した場合、死体は産業廃棄物となり、その飼養者は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に従い、家畜死体を自ら適切に処理しなければならない。
本県では、死亡した家畜の大部分は、従来から周東町の化成場(山口県特殊化成企業組合)へ搬入し処理を依頼していたが、特に県西部地域では化成場までの距離が遠く、搬入に多くの時間と経費を要すると共に、夏季の高温時には、家畜死体の腐敗等による環境問題や、化成原料の品質低下等様々な課題を抱えていた。
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1 補助事業への取組み
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社団法人全国家畜畜産物衛生指導協会(以下、全国衛指協)は、死亡家畜の衛生的な処理を行うため、平成6年度から、「死亡家畜の運搬を行う為の車両の購入や、死亡家畜の一時ストックの為の大型冷蔵施設の建設」等に対し、新規補助事業(畜産衛生環境整備円滑化事業)を起こした。本県でも初年度から社団法人山口県家畜畜産物衛生指導協会(以下、山口県衛指協)が事業主体
となり、本事業の調査事業(ソフト)から取組みを開始した。
山口県衛指協では、山口県畜産課の指導を受けながら、県域の畜産団体(経済連・共済連・県酪・深川養鶏等)に呼び掛け、ハード事業(家畜死体処理円滑化施設整備事業)の実施に向け幅広い調査・検討を行う「畜産衛生環境整備円滑化事業幹事会」を設置し活動を開始した。
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2 畜産衛生環境整備円滑化事業幹事会の活動
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平成6年度の幹事会では、特に県西部地域に於いて、畜産農家の保冷施設設置要望が強いことと、本県でも、年間の家畜死廃事故件数は牛1,000余頭、豚100余頭(H6年度県農業共済連統計)とある事等から、畜産経営の合理化と環境衛生の推進を支援する施設として、特に県西部地域に必要な施設であるとの結論に達した。
平成7年度の幹事会では、事業対象予定地を「長門大津地区・豊関地区・美祢地区・宇部厚狭地区・山口地区(阿知須町)」の17市町村に絞り、関係市町及び農協に事業の概要を説明した。その結果、これら関係市町及び農協の賛同が得られた。
このような事業の説明会で、その場で全員一致で負担金の拠出が合意された事は過去にあまり例が無く、この施設は、関係者一同が日頃から必要と考えていた結果と思われた。
また、豊田町のご好意により施設は豊田町内に設置するとの事で内定した。
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3 予算の確保と施設設置予定地区の対応
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平成7年度から、県及び関係の市町や農協等団体では、家畜保冷施設建設に向け具体的な作業が進められた。特に施設を設置する豊田町では、町・議会・地元自治会・酪農組合の代表者が、全国で同事業により最初の施設として建設された、宮城県の家畜保冷施設の現地調査を行った。
その結果、当該施設は、環境面や地元住民との関係も良かった事等から、現地調査の状況と施設の概況等を地元自治会に報告し、平成8年度に家畜保冷施設を豊田町に建設することについて、地権者や地元自治会の承諾を得た。 |
保冷センター全景 |
4 ハード事業の着手と完成
平成8年度に入り、山口県衛指協が事業主体となり、関係機関等の指導と協力を得ながら保冷施設の建設に着手し、平成9年3月には工事も無事竣工し山口県西部家畜保冷衛生センター(以下、保冷センター)が完成した。
このような経緯により、山口県西部地域における死亡家畜の受入れ体制が出来あがった。
5 死亡家畜の受け入れ
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平成9年5月1日から死亡家畜の受け入れを開始したが、当初はPR不足等もあり、5・6月は利用頭数が少なく、保冷センターの運営が懸念されたが、7月からは利用率も漸増して来た。
また、搬入作業を委託している豊田酪農農業協同組合の8名は、7月には全員がクレーン運転業務特別教育及び実技講習会を修了し、9月には玉掛技能講習会も修了され、搬入作業は順調に行われている。
本施設は、地元豊田町を始め関係機関の大変なご尽力により、県西部地域の、畜産農家の為に建設された施設であることから、家畜が死亡した場合には、次の表や図を参考にされ、保冷センターを十分活用されるようお願いしたい。
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(1) 施設の概要
施設やその管理者、作業委託先等は表1のとおりである。
表1 施設・管理者等の概要
区 分 | 概 要 |
所 在 地 | 豊田町大字矢田字矢田沖 |
建
物 | 構 造 | 鉄骨造り平屋建 |
面 積 | 101.38 |
内 訳 | 事務室、保冷室、荷物積載用プラットホーム、倉庫 |
施 設 | 整備管理 | 山口県衛指協 |
管理運用 | 保冷センター管理運用協議会 |
作 業 | 委 託 先 | 搬入→豊田酪農農業協同組合 |
(2) 畜産農家の利用方法 家畜が死亡や流死産した場合には、次の手順により利用することができる。
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[1] 診療獣医師に連絡し、保冷センターが規定している「搬入指示書」を発行してもらう(指示書は必ず家畜の死体と一緒に保冷センターへ持参する。
[2] 豊田酪農農業協同組合へ搬入予定時刻を連絡する(9〜17時迄)。時間外は当番に直接連絡する(午後9時迄なら受付け可)。
[3] 家畜保冷衛生センターへの搬入経路は、図1のとおり。
[4] 保冷センターに到着した後は、係員に「搬入指示書」を提出し、係員の指示に従う。
[5] 利用料金は、別表3の通り。
利用料金は、利用月の翌月に、事務局から本人へ通知すると共に、本人の所属する組合へまとめて請求する。
請求を受けた組合(県酪・JA等)は、料金を利用者から徴収し保冷センターの口座へ振り込む。
図1 保冷センター位置図
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表3 保冷センターの利用料金
畜 種 | 日 齢 | 手数料 (1頭当たり) |
牛 | 成 牛 (13カ月齢以上) | 10,000円 |
育成牛 (6カ月齢以上13カ月未満) | 5,000円 |
子 牛 (6カ月齢未満) | 2,000円 |
豚 | 成・育成豚 (2カ月齢以上) | 2,000円 |
子豚 (2カ月齢未満は一腹) | 2,000円 |
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6 保冷センターの管理と運用
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施設の管理や運用に関するフローチャートは図2の通りである。 |
7 月別利用状況
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平成9年12月末日までの8ヵ月間に113(乳用牛75頭、肉用牛38頭)の利用があった。(表4)
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表4 家畜保冷センター利用状況
月 | 乳用牛 | 肉用牛 | 計 |
子牛・育成 | 成 牛 | 計 | 子牛・育成 | 成 牛 | 計 | 子牛・育成 | 成 牛 | 計 |
5 | 2 | 2 | 4 | 1 | 1 | 2 | 3 | 3 | 6 |
6 | 0 | 4 | 4 | 1 | 2 | 3 | 1 | 6 | 7 |
7 | 6 | 15 | 21 | 3 | 4 | 7 | 9 | 19 | 28 |
8 | 3 | 15 | 18 | 2 | 5 | 7 | 5 | 20 | 25 |
9 | 3 | 11 | 14 | 0 | 3 | 3 | 3 | 14 | 17 |
10 | 0 | 7 | 7 | 1 | 4 | 5 | 1 | 11 | 12 |
11 | 1 | 7 | 8 | 2 | 1 | 3 | 3 | 8 | 11 |
12 | 0 | 1 | 1 | 2 | 4 | 6 | 2 | 5 | 7 |
計 | 15 | 62 | 77 | 12 | 24 | 36 | 27 | 86 | 113 |
8 おわりに
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保冷センターは、山口県衛指協が事業主体となり、関係機関、団体の御支援と地元豊田町の絶大なご協力により、全国で5番目に完成した死亡家畜の保冷衛生施設である。
本施設の利用(死亡家畜)は、多くては困る反面、利用率が低くても運営がむつかしいため、県西部地域で家畜が死亡した場合は、全てこの保冷センターを活用され、環境衛生の向上と経営の合理化に役立てて頂くことを期待している。
この施設の運営管理は、「山口県西部家畜保冷衛生センター管理運営協議会」に委託しているが、現在までの利用頭数はほぼ計画にそったものとなっている。しかし、経営的にはランニングコスト等が嵩み、初年度は赤字となる見込みであり、運営面の改善が必要である。
保冷センターは開設後順調に利用されて来たが、これも診療獣医師(搬入指示書の発行等)、豊田酪農農業協同組合(管理・連絡と搬入作業等)、山口県特殊化成企業組合(搬出作業等)の皆様方をはじめ、多くの方々の御支援と御協力の賜物であることを、紙面を借りて心から厚く御礼申しあげる。 |
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