近年、見直されてきているシバ型草地における放牧は、省力性の観点から放牧頭数は、期間中一定であることが望ましい。しかし、現状では寒地型放牧草地が主体である西南暖地中・高標高地において、春季と夏季で放牧草の生長量に著しい差があり、放牧の制限若しくは休止をしなければならない。そこでノシバが登場した。ノシバは夏季において高い生産性を維持し、牧養力の安
定・草地の永続性に優れる。
そこで、今注目されているノシバ及び短草型牧草種組み合わせによる、夏期、冬期の主力牧草の移行期(トランジッション期)及び低生長期を乗りきる技術の概要を説明しよう。
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まずはノシバ草地を創ってみよう
ノシバは、特殊な土壌、気象条件地を除き珍しい草ではない。ノシバは、雑草を含めたほとんどの草に対し刈り取り、採食、放牧等の攪乱(外的圧力の一種)に対し高い抵抗性を示し、こうした一般植物にとって不利な条件下におくことによって容易に優占度を高める。しかし、一般的には、攪乱によるノシバの優占には数年を要すため、人力による手助けを行うことになる。ノシバ草地の造成は、前植生を刈払い若しくは火入れにより除去し、 根部に土壌が付着したままのノシバを用意し、根を傷つけないように3〜5程度の芽数を有するほふく茎にほぐし苗シバとする。マット状になったノシバは1u当り80〜200芽を有し、1uで50本程度の苗シバを得ることができる。50〜70cm間隔に深さ10cm程度の穴を掘り、2〜3本の苗シバを入れ、土を被せて強く踏圧する。植付け後、適度な土壌水分の維持が定着率を向上させるため、散水処理若しくは雨季を控えた時期に植付けを行うと良い。定着後のノシバは雑草に被圧されやすく、整理刈り、軽放牧等を実施し、日照確保に配慮する必要がある。更に短期間でノシバ草地の造成を行うときは植付け間隔を短くする。
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組み合わせる短草型牧草種は?
ノシバに組み合わせる短草型牧草種はトールフェスク、ケンタッキーブルーグラス等が市販流通しているが、これらは、放牧適性が高く、嗜好性も良い。いずれも植付け時に土壌を良く砕土する事が必要で、基肥(N・P・K=1.・1.5・1.kg/a)を施し、種子2kg/10a程度を散播し、覆土後、十分に鎮圧する。できあがったノシバ草地と短草型牧草種草地は放牧牛の自主的移動が可能となるよう連続的に配置する。平坦部に機械作業も可能な短草型トールフェスク草地を配置し、傾斜部にノシバ草地をレイアウトすると後のメンテに便利だ。傾斜地放棄田等で周辺傾斜面を取込んで放牧を行う場合にも同様である。
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組み合わせ効果
安定した牧養力が得られる7月から10月の120日間に、各放牧草地で黒毛和種成雌牛3頭による放牧飼養を行い、草量前後作法により草地の牧養力を算定してみた(表1)(図1)。
表1 草種別食草量と牧養力
| 期間計(120日) (kg/10a) | | 期間計(120日) (kg/10a) |
ノシバ+ TF | 現場重量 | 3,351.9 | ノシバ区 | 現場重量 | 2,745.2 |
乾物重量 | 945.9 | 乾物重量 | 986.6 |
TDN量 | 600.9 | TDN量 | 511.1 |
*C D | (140.0) | *C D | (119.0) |
TF区 | 現場重量 | 3,958.5 | 3種混播区 | 現場重量 | 2,321.3 |
乾物重量 | 904.9 | 乾物重量 | 667.6 |
TDN量 | 960.7 | TDN量 | 345.9 |
*C D | (161.0) | *C D | ( 80.5) |
*10a当たりTDN量/体重500kg換算放牧雄牛の維持要求TDN量
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短草型トールフェスク草地では8月、9月は牧養力が連続して減少し、9月では7月比48%となるが、ノシバ草地では、7月から10月まで牧養力の増加が続き、高い生産性を維持する。
ノシバ(5a)と短草型トールフェスク(5a)を組合わせた草地では期間中30CD以上の安定した牧養力を保つ。10aの放牧草地からの摂取TDN量が体重500kg黒毛和種雌牛1頭30日間維持必要TDN量を満たしていることを示ている。
従来の長草型混播草地より高い牧養力が維持される
同一条件で造成した今までの、長草型混播草地 [オーチャドグラス、トールフェスク、白クローバー] の牧養力は、8月に7月の27%まで落込み、期間CDは80.5CDで、草勢回復のため9月以降一時休牧が必要(図1)なのに対し、ノシバ+TF区では140CDとなり、高い水準となる。
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更に生産性を高める
更に牧養力を向上させるために、同一ほ場でノシバ草地に重ね播きする手法がある。これはもう、Jリーグ等のスポーツターフの世界だが、限られた用地を最大限に活用し、草地を美しく保つ技術として、ソッドシーダー、マクロシードペレット等の新技術の畜産的応用が可能だ。
興味のある方は、畜産試験場で見ることができるので連絡していただきたい。
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