「ミナミアオバ」「シワスアオバ」 年内に出穂するシワスアオバ (1996年11月24日撮影) |
「シワスアオバ」は極早生の「ミナミワセ」を母材に、年内出穂を育種目標として、山口県農業試験場で育成された品種である。年内出穂と年内草の多収性等が認められ、イタリアンライグラス農林18号として1997年に農林登録された。
農家への種子供給は2〜3年後になるが、「シワスアオバ」の特性等を紹介するので、是非営農に活用していただきたい。
1 特 性
(1) 出穂性
シワスアオバは10月上旬までに播種すれば年内に出穂する超極早生品種である。年内に収穫できるので、後作の準備が余裕をもって実施出来、早期水稲や早播きトウモロコシとの輪作に適する。
播種期と出穂期
播種期 | 出穂期(月/日) |
シワスアオバ | ミナミアオバ |
9/22 | 11/19 | 4/6 |
10/5 | 12/5 | 4/7 |
10/21 | 3/17 | 4/13 |
注)1993〜1994年、山口農試 |
(2) 収量性
シワスアオバは春1番草までの乾物収量は極早生のミナミアオバに劣るが、年内草はミナミアオバの約3割の増収を示す年内多収の品種である。年内草重視の作付体系にはシワスアオバの利用が有効である。
(3) 形態的特性
シワスアオバの草型はやや直立で、草丈、稈長は短く、茎葉が小さく、茎数の少ない小振りな形態である。
形態的特性
形質 | シワスアオバ | ミナミアオバ |
草 型 | 3.2 | 4.5 |
草丈(cm) | 51.9 | 95.0 |
稈長(cm) | 58.4 | 93.9 |
葉幅(cm) | 6.4 | 10.2 |
稈径(mm) | 1.9 | 2.5 |
茎数() | 1,781 | 2,805 |
注)1993〜1995年、山口農試 草型;1(直立)−9(ほふく)
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刈取時の乾物率
番草 | 品種 | 乾物率(%) |
年 内 | シワスアオバ ミナミアオバ | 14.8 13.0 |
春1番 | シワスアオバ ミナミアオバ | 20.9 16.9 |
注)1993〜1995年、山口農試
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(4) 乾物率
シワスアオバの乾物率はミナミアオバに比べ約2〜4%高く、サイレージ調製時に有利である。
(5) 残根量
シワスアオバの残根量はミナミアオバに比べ約半分である。このため、後作の施肥管理が容易で、しかも水稲では還元障害が出にくい。
(6) 刈取り後の衰退が早い
シワスアオバは生育の衰退が早いので、混播や追播した時の春期における同伴草種との競合が少なく、トールフェスクなどの永年生牧草への追播に適する。また、暖地型牧草に追播すると周年利用が可能となる。
2 適 地
10月の平均気温が16℃以上、1月は4℃以上の地域が適地である。山口県では、平坦部とくに霜のおそい沿岸部などが適地である。
3 栽培上の注意
(1) 晩播きしない
10月中旬以降に播種すると年内出穂しないのでシワスアオバの特性が発揮できない。播種適期は9月中〜10月上旬である。ただし、極端な早播きはいもち病多発のおそれがあるので避ける。
(2) 播種量は多めに
茎数が少ないので、標準より多めの350g/a播きが適当である。 |
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