(牛受精卵移植の普及)
「牛受精卵移植の普及」をテーマに
    先進的畜産経営者交流会の開催

山口県畜産会    
     山 本   宰

 平成9年8月20日県畜産試験場に於て県畜産会主催で先進的畜産経営者交流会を開催した。参加者は県下の肉用牛生産農家・酪農家と、その関係機関・団体の職員等、80余名で会場は一杯であった。
 交流会とは畜産農家が減少する中、各地域で孤立化することが生産意欲の低下につながる傾向があることから、県域で農家同志が管理技術等について議論する場を設け、その会が終了後もお互いに遠く離れていても電話等で交流しあってもらうことを目的としている。
 したがって研修会や講演会でなく、あくまでも交流会である。
 また、参加農家の案内は県下全域の全戸にすると出席者が多くなり交流会にならず、従って日頃、畜産会が経営診断等をしている農家と家畜保健衛生所等から推薦のあった農家を中心に案内をした。



1 交流会の課題

 今回の課題は「受精卵移植の普及」とした。
 山口県は、1983年度より国の受精卵移植事業に取組み、試験場内や畜産農家で各試験を実施し、さらに1990年からは、移植を家畜保健衛生所の職員から民間獣医師や人工受精師に移行し現在に至っている。
 そして平成10年度から黒毛和種の受精卵が有償化になることから、これを踏まえての交流会となった。
 当日は晴天で真夏日であったが、暑さにもめげずの開催となった。


2 開催内容

1) 現地研修
 朝10時30分から正午までの午前中は現地研修である。
 まず玄関前で出席者全員が場から長靴と白衣を借受け着用し、現場まで歩いての参加となった。これは、試験場が多くの家畜を飼養しているので家畜伝染病の予防上、重要なことである。  研修は3班に別れて行われ、1班は種雄牛を昨年と今年、兵庫県から3頭、島根県から1頭購入しているが、これらについての説明を受けた。2班は供卵牛として血統の良い雌牛を現在40頭繋養しており、これらについての説明。3班は室内で供卵牛からの採卵を見学。これらを一定の時間を交代で研修する方法である。
 各班で講師から懇切丁寧に説明を受け、一同感銘していた。その講師先生は畜産試験場の研究員の方々である。 正午になり午後の会場になる講堂で全員が昼食。


種雄牛の説明(1班)
 
供卵牛の説明(2班)


採卵の研修(3班)

2) 交流会

交  流  会

 午後1時から本題の「受精卵移植の普及」と題して交流会を開催した。
 この交流会には畜産農家同志がお互いに顔を見ながら意見を交換してもらうため、机を片仮名のロの字に設置し、その前中央に司会者席、その隣に助言者席を設けた。助言者には山口大学鈴木教授、県庁畜産課岡田係長、県畜産試験場松崎生物工学室長、市野主任、杉山畜産アドバイザー、畜産農家から防府市松永博視の各氏を招き、司会は主催者である畜産会の小職がつとめた。
 最初は鈴木教授から「牛受精卵移植の受胎率向上対策」について説明があり、受胎率向上が最も重要であると力説された。
 つぎに畜産試験場の松崎室長から「牛の受精卵移植の現状と試験研究の取組み」と題し山口県の実施状況と現在取り組んでいる新技術について説明があった。
 さらに畜産農家代表として防府市の松永博視氏から防府市街地で酪農経営が規模拡大出来ない現状のなか、所得向上につながる手法として受精卵移植を実践しており、経産牛30頭規模で2/3は受精卵移植かF1の産子を生産し、受胎率は年によって違うが常に50%以上を維持している。メリットは子牛が高く売れるようにすること、等の説明があった。
 説明が終ったあと農家同志の交流の場となり、農家側から受精卵は安くしてほしい。高受胎率を確保するにはどうすればよいか。この技術のメリットは等の質問があり、助言者からそれぞれ適切な答弁がなされた。とくに農家の立場からは実際に受精卵移植をおこない効果をあげている松永博視氏の体験からの答えには同業者としての関心があった。
 予定の時間が来たので会を閉じ15時には現地解散した。


3 おわりに

 夏に開催し暑い中、畜産農家は勿論のこと、県畜産課、各家畜保健衛生所、経済連、県酪等関係機関・団体の多くの参加者があり、この交流会が盛大に開催できたことを心から感謝するとともに、とくに助言者として山口大学農学部鈴木教授や会場の設営、この運営、 助言者等について絶大なご協力を賜った畜産試験場長ほか職員の方々に深甚なる謝意を表します。


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