家畜診療所 −9年目を迎えて 

中川和克

 萩市にある北部地区家畜診療所は連合会直営の診療所として開所し9年目となる。 その管轄範囲は萩市・阿武郡 (阿東町を除く) である。 今までこの地域は田万川町に農協直営の診療所があったのみで、 他の地域は開業又は、 勤務獣医師が大動物の診療をしていた。 その中で開所したのだが、 当初は管内が広範囲であることから、 業務方針が定まらず暗中模索をしながら現況に対応してきたものである。
 まず、 所の業務であるが、 この8市町村の広範囲な診療地域で、 萩市に本所を、 田万川町に支所を構え、 この管内を獣医師3名の診療体制で実施しているものの留守番電話とポケットベルでお互いに連絡をとりながら畜産農家のためと頑張っているが、 それでも各農家の要望に十分応えられていないのが現状である。 そんな中、 4週7休制の目標どおりは休めていないが、 夜間、 日曜、 休日の診療は比較的少ないので幸いしている。

 昨今、 完全週休2日制が検討されている中、 畜産農家の要望に応え、 迷惑のかからない診療体制を検討しなければならないと考えている。

表1.家畜引受頭数と支払金
単位;千円
       年 度
    畜  種
S  
63
H(S64)

  2 

  3 

  4 

  5 

  6 

  7 

乳用牛 有資格頭数
引受頭数
315 310 334 354 288 190 208 210
302 297 299 298 184 174 187 200
肉用牛 有資格頭数
引受頭数
2,121 2,092 2,116 2,116 1,888 1,780 1,972 2,016
2,281 2,259 2,279 2,115 2,081 2,071 2,074 2,233

乳用牛 頭   数
支払共済金
17 24 33 24 21 17 17 17
1,762 2,845 4,087 3,063 2,734 2,294 2,092 2,037
肉用牛 頭   数
支払共済金
82 71 86 75 72 76 66 91
7,808 8,251 10,987 9,115 8,808 3,243 10,055 13,601

乳用牛 件   数
支払共済金
261 325 331 324 258 160 164 199
3,419 3,316 3,977 3,481 3,469 2,513 2,539 2,624
肉用牛 件   数
支払共済金
870 971 983 910 898 884 875 1,017
5,181 6,074 7,131 5,985 6,452 7,342 7,227 7,615


 家畜の引受け頭数 (表1) は、 乳牛では昭和63年〜平成3年まで横這いであった、 平成4年に多頭飼養農家の廃業により引受け頭数が著しく減少し、 その後は横這い状況が続いている。 次に肉用牛は、 昭和63年より平成7年に至るまで、 ほぼ横這い状況が続いている。 これは戸数は減少したものの飼養農家の規模拡大がすすみ、 その結果であろうと考えている。

 その間、 この地域の特徴として特産である無角和種は飼養農家が廃業、 或いは黒毛和種飼養に変わったことから頭数減がつづき、 その対応策として無角和種振興公社が設立され無角和種繁殖センターに集中管理されるに至った経緯がある。 さらに特筆すべきはキャトルファームの種雄牛の引受を行なったことである。

 次に牛の死亡及び廃用の事故としては、 まず乳牛は平成4年までに多発し (引受け頭数が多かった関係もあると思われる) 以後、 毎年平均して発生している。 一方、 肉用牛は平成6年まで減少傾向を示していたが平成7年に多発した。

 病気で分類すると乳牛で平成2年を中心に蹄、 四肢関節疾患にかかるものが多発し、 一方、 肉用牛は平成7年に関節炎等の疾患が多発した。 その原因は黒毛和種の肥育牛でビタミン欠乏の誘因と思われる関節炎による廃用や突然死である。 また、 管内ではあまり見られなかった脂肪壊死が最近、 多く認められるようになった。 さらに無角和種のセンターへの集中管理時の事故があった。

 病傷事故は、 乳牛で平成4年まで多発し (加入頭数が多かったためか)、 その後、 減少したものの徐々に増加の傾向を示している。 一方、 肉用牛は平成6年まではやゝ減少ぎみであったが、 平成7年には多発し、 初めて1,000件を越えた。

 これを病気で分類すると、 乳牛は繁殖障害、 産前後の疾患等で、 肉用牛は繁殖障害や、 子牛の肺炎、 下痢などが毎年、 多発している。 この中、 注目するところは、 コクシジュウム等の寄生虫病が以前は子牛に多く発生していたものが最近は育成牛等の比較的大きい牛に多く発生が認められている。

 最後に牛の増頭については、 県が増頭すべく計画を樹立し具体的に推進について検討しているが、 その成果を期待したい。 加えて我々も畜産農家の為に病気治療や対策に最善の努力していく所存である。

(山口県農業共済組合連合会 北部地区家畜診療所長)


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