研究速報 |
ハーブを利用した合鴨特有臭の抑制 |
小林 清敬 |
近年、 合鴨を水稲作に利用する合鴨水稲同時作が脚光を浴びている。 この農法では合鴨による雑草防除、 害虫駆除、 養分供給等の効果があるとされているようだが、 問題点がない訳でもない。 そのひとつに水稲作で役目を果たした合鴨そのものの利用が挙げられる。
合鴨の利用については、 さらに二つに分けられる。 それは、 @鶏に比べて脱毛が煩雑なことと、 A合鴨をどのような形態で消費するかである。 合鴨の脱毛 (毛抜き) が鶏より手間がかかることが合鴨を流通させる上で最大のネックになっている。 現在、 一番効果的な脱毛法は、 パラフィンや松ヤニ等を用いたワックスピッキング法ではないかと思われるが、 鶏の脱毛に比べるとかなりの労力が必要である。 二つ目の問題の合鴨の消費形態に関しては、 鍋料理やその他の料理の素材に利用されるものが多いのではないかと推測される。 合鴨水稲作の利用体系上、 合鴨の仕上がり時期は、 秋から冬に集中するので、 生肉として消費できないものは、 肉の凍結や加工による保存が必要となる。
合鴨肉を加工する場合には、 脂肪融点が低いことと合鴨独特の臭いに注意しなければならない。
結論から言えば、 加工品 (中抜きの合鴨を加熱した製品) 製造に用いる塩せき液 (食塩7%、 砂糖4%、 結着剤1%、 化学調味料0.1%、 発色剤0.1%) にベイ、 セージ、 ローズマリーのいずれかのハーブを、 0.5%以上添加すれば合鴨の特有臭を抑制できることが判った。
図1 試験での製造工程
合 鴨 の 料 理 官能検査による判定では、 前述の3種類のハーブが合鴨の臭いの抑制にはよく効いた。 また、 添加量を検討したところ、 塩せき液にハーブのどれか1種類を0.5%以上添加すれば、 ハーブ香を付与し、 合鴨の特有臭をほぼ抑制することができた。 この製品の保存性を検討たところ、 保存中の生菌数やカビの発生状況から、 ハーブのみを用いた製品の保存日数は、 くん煙処理したものより短かかった。 それでもポリエチレン袋による包装をした場合、 約3週間の保存が可能であった。 ハーブ添加とくん煙処理を併用すれば保存性は向上するが、 ハーブの香りがくん煙の強い香りに消され、 ハーブ利用の効果が薄れてしまう。
現代では、 加工品は保存食品と言うより嗜好品的な性格も強くなった。 試験での製造工程 (図1) を参考にすれば、 合鴨の臭いを抑えて、 ハーブの香りも楽しむことのできる製品ができる。
図2 合鴨加工品の製造工程(ハーブ併用)
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